そこにはこのように書かれている。
確かに、「外国人技能実習事業者の7割が労働基準関係法令に違反」という事実はあるが、これはあくまで「日本人も含まれた、事業者全体の違反」であり、決して「7割の全てが技能実習生に関する違反」というわけではないのだ。
ではこの技能実習事業者における「7割」という違反率が、日本全体の違反率と比して高いか否かという話になるのだが、厚生労働省の「労働基準監督年報」を基に算出する限り、18年(平成30年)から過去4年分については「ほぼ同程度」であることが見てとれる(日本全体の違反率:66.8%〜69.1%に対し、技能実習事業者の違反率:70.4%〜71.4%)。
また技能実習法においては、実習実施者を監理する監理団体は、3カ月に1回行う法定監理業務の中で、労働関係法令違反を把握した場合、労働基準監督機関に報告しなければならないという決まりができた。そして、重大な違反が発覚すると摘発を受け、監理団体の許認可取り消しに至ることになっている。それに伴って労働法規に対する学習と理解が深まり、監理団体の意識も変化し、技能実習生の保護、労働環境の改善につながりつつあるといわれている。
ということは、技能実習生を受け入れている事業者の方がかえって法令順守に対する監視の目が厳しくなり、全体平均よりもむしろ違反率が低いという状況にもなり得る。これは、技能実習制度の在り方にまつわる問題に真剣に向き合い、行政と監理団体が改善へと動き始めた成果であるといえるだろう。丸山理事長はこう述べた。
「まだ、完全にクリーンとまではいえませんが、一部メディアで報道されていたような事案は格段に少なくなっていると思います。また、そうありたいですね」
近年では監理団体の数も増え、監理団体間の競争も進んでいるという。大手人材会社も協同組合を設立したり、買収したりすることで実質的に技能実習の業界に参入する動きも出てきている。そうなれば、「選ばれる団体」と「淘汰される団体」に分かれることとなり、業界全体の質向上にもつながっていくことが期待できるだろう。
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