居酒屋大手「ワタミ」に対して、高崎労働基準監督署から残業代未払いに関する是正勧告が出されたとの報道があった。本件を報道したYahoo!ニュースの記事によると、被害者であるAさんは「ワタミの宅食」で正社員として勤務していたが、長時間労働による精神疾患のため現在休職中という。また同社においては長時間残業が常態化しており、6〜7月には過労死ラインの2倍となる月175時間の残業があったとして、「長時間労働で労働者を使い捨てにする『ブラック企業』ぶりを改めて露呈」と厳しく批判している。
筆者は、ワタミがブラック批判にさらされていた2013年前後、ワタミを批判する側の筆頭のような立場にいた。しかし、同社のその後の変革と改善を目の当たりにし、現在はむしろ同社のホワイト化を伝道する立場へと“転向”している者だ。これまでの環境改善の経緯はリアルタイムでたびたび報道していたこともあり、今回の労災事案を機に「お前の書いた『ワタミホワイト化』の記事はまるでウソではないか」といった批判も頂戴している。
そこで筆者は、これまでの長年にわたる同社取材をへて構築したネットワークを基に、本件の真相を探るべく調査と、関連各所への取材をおこなった。本稿はその結果をまとめたものである。筆者は何もワタミを全面的に擁護しようとしているわけではない。利害関係が一致しない者同士では言い分が真っ向から対立することはあるし、第三者委員会の調査も、ワタミとユニオン間での団体交渉も始まったばかりで、これから段階的に明らかになっていくことも多々あるだろう。
本記事は今のところ数少ないワタミ側の立場に拠り、既に報道されている一方でこのような事象が発生している、という事実を広く知らしめる意図のものであることを強調したい。
さて、当該記事中で、Aさんが被害を訴えている事項は次の通りだ。
<業務範囲>
<労働時間>
<待遇や労働環境>
確かに、これだけを見聞きすれば「ブラックな環境」と断言して間違いないだろう。
一方、ワタミは当該報道に対して即日リリースを発表した。記事内容を受けて謝罪の意を示すもので、「当社では、当該社員の主張を真摯に受け止めて、当該社員に深く謝罪いたします」「全面的に当該社員の主張を受け入れる所存です」と表明。労基署の指示に基づき、時間外労働、深夜労働、休日労働の割増賃金不足分を過去にさかのぼって再計算して支払うとともに、
と発表した。
しかしYahoo!ニュースの続報記事では、この謝罪を「パフォーマンス」と断言。ワタミにおける労働時間短縮の取り組みについても「現場レベルではあくまでも労基署対策として位置付けられていた」と説明する。
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