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【独自】ワタミ「ブラック企業に逆戻り」騒動 内部取材で明らかになった、衝撃のウラ話を暴露する告発された「パワハラ」の実態(2/10 ページ)

» 2020年11月05日 05時00分 公開
[新田龍ITmedia]

 具体的にはAさんの証言を基に、

  • 休日に社用携帯電話を切ることもできず、煩雑な配達の管理システムの見直しもされず、具体的な業務削減策による長時間労働削減の対策は全くなされなかった
  • 出勤時間や退勤時間が上司によって改ざんできるようになっており、月の残業時間上限である「30時間」に合わせるために自発的に修正するような圧力があった
  • 1日10時間の「勤務インターバル制度」は守られておらず、対外的なアピールでしかなかった
  • 長時間労働や理不尽な働かされ方について上司に何度も対応を訴えたが、会社側はなんら誠実に対応しなかった

 といった問題点を列挙した。改ざんや長時間労働・パワハラにまみれたワタミの謝罪は信頼できないが、当該記事執筆が代表を務める団体と、関連するユニオンのサポートによってまずは謝罪という成果につながった、と結んでいる。

Aさんの言い分「だけ」をうのみにしてよいのか

 14年以来「労働環境改善」を経営最重要項目と設定し、実際に労働時間短縮や離職率改善を成し遂げ、対外的にも「ホワイト企業」アピールをしてきたワタミに、再度発生した今回の事件。ここぞとばかりに、識者からも「ホワイト化アピールはウソだったのか!?」「やはり渡邉美樹が復帰したらブラックに逆戻り!!」などと批判が相次いだ。

ホワイト企業大賞の特別賞も受賞していたワタミだが……(出所:同社発行のリリース)

 実際、高崎労働基準監督署から9月15日付で是正勧告書が出されたことは事実であるし、上司によってAさんの勤怠記録が事後的に修正されたことも事実だ。ワタミは労務管理がなっていなかった、と非難を受けても致し方ないだろう。また、パワハラ的な事象も発生しており、職場でのパワハラ防止のために必要な措置を講じることを定め、本年6月から施行された「パワハラ防止法」(改正労働施策総合推進法)にも違反していることになる。まさに当初報道の通り、ワタミは改ざんや長時間労働・パワハラにまみれた悪徳企業として断罪されるべきであろう――Aさんの言い分を全て信じるならば。

 というのも、ここまで述べてきたことは、あくまで当事者である被害者のAさんと、AさんをサポートするNPO、及び外部ユニオンの側から語られた情報だからだ。そして、当該記事以外の大手メディア報道もほぼ全てが、同じ被害者サイドに立った情報を発信している。

 それはそうだろう。東証1部上場の大手企業を相手に、たった1人で被害を訴える告発だ。しかも相手はこれまで散々ブラック企業のそしりを受けてきて、改善されたかと思いきや「やはりブラックのままだった」という文脈に置かれた企業。明らかに企業側が怪しく、どこまでその裏の実態が暴かれるのか、読者の耳目を大いに引く構図といえる。

 しかし当該報道はまた一方で、ワタミのホワイト化に寄り添った筆者をして大いに疑念を抱かせるものでもあった。

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