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【独自】ワタミ「ブラック企業に逆戻り」騒動 内部取材で明らかになった、衝撃のウラ話を暴露する告発された「パワハラ」の実態(6/10 ページ)

» 2020年11月05日 05時00分 公開
[新田龍ITmedia]

(4)Aさんが赴任後、大量に退職した既存スタッフ

 Aさんが着任する前、一方の営業所には13人、もう一方には10人のスタッフが在籍していたが、Aさんの所長就任から半年間が経過した時点で、2拠点合わせて延べ約20人ものスタッフが退職する事態となってしまっている。

 スタッフは「とにかく高圧的」「あのままAさんがいたら皆辞めていたと思う」「10年選手のスタッフが何人も辞めているのに、本社の人はなぜ気づいてくれないのかと思っていた」と証言。また別の所長にも確認したところ、「他の営業所でもスタッフが辞めることは年に数人程度あるが、半年という短期間のうちにこんなに辞めているのは明らかに異常」との見解であった。

出所:ゲッティイメージズ

(5)当初報道とは全く異なる、Aさんの実際の働きぶり

Aさんと同じ拠点に勤めていたスタッフによると、当初報道をネットニュースで見た際、「どうしてそこまでウソがいえるのか」とあきれ返ったという。実際、当初報道と実際の働きぶりの差異は次のような点である。スタッフの証言を基に対比を見ていこう。

報道と実際との差異:<業務範囲>

・所長として2つの事業所を担当させられ、業務は多岐にわたる

→2拠点担当は本人の希望を上司が受け入れ形にしたもの。業務についても、検品作業はスタッフが、また事務作業についても専任の事務スタッフがほぼ全てを行っており、Aさんはタッチしていない。

・配達員の質問への対応や、当日欠勤した配達員の代配を行う

→利用客から問い合わせがあってもスタッフに対応を任せ、Aさん本人は特に対応しない。「代配は所長の仕事ではないから私は代配しません」と口癖のように言っていた。

・配達員に充分な研修がなされないため、同行してルートを教えるなどのフォローも必要

→「Aさんに新人さんの同行をお願いしたが『時間がない」といってやってくれなかった」とあるスタッフは証言している。

報道と実際との差異:<労働時間>

・通常午前7時台、早いときは6時台の出勤。退勤は午後11時を過ぎる

→「実際に朝来るのは9時過ぎくらい。やらなければならないことをやっているわけではなく、『ふかしいも』(顧客に配送する、隔週刊の宅食メニュー献立表)にメモをホチキス留めするとか、朝礼の場で言えばいいような事項をわざわざA3用紙に何枚も細かくメモする作業などをわざわざ出社してやっていた」「会社の指示でも義務でもなく、Aさん自身の意志でやっていたことではないか」とスタッフは証言している。

・帰宅後にも代配対応や納品対応、機器の不具合などで出勤する必要があったほか、土日にも宅配を行う拠点のため、週末も電話対応せざるを得なかった

 →土日の配送はスタッフ任せだったし、仮に対処しなければならないとしても数分で終わる程度の業務量だった。実際、休日にお客さまから弁当が届かないという連絡があり、Aさんに連絡したところ「土日まで私に連絡しないでください」と言われた。また冷蔵庫や冷凍庫が止まるようなトラブルもあるが、年に1回程度。「代配もしていないし、何にそんなに時間がかかっていたのか分からない」(一部スタッフ)

・多くの顧客を抱えていた配達員が辞めた際は、土日を含めて毎日代配を行い、多い日には40軒ほど回った

 →Aさんは「従えないならどうぞお辞めください。新しい人はどんどん入ってくるので困りませんから」と豪語していた。そのような普段からの言動や行動によってスタッフが辞めてしまい、どうしようもなく代配したことが数日ある程度。会社のせいではなく自業自得ではないか。休日については「家族がいるから休みます」「自分達のお客さまなのだから、自分達が担当してやればいいから」とスタッフにやらせていた。

報道と実際との差異:<待遇や労働環境>

・上司に相談しても「配達員の教育がなっていない」と、むしろAさんの管理能力のせいにされてしまう

 →スタッフからは以下のような証言がある。

 「Aさんは目も合わせず口もきいてくれず、あれだけ嫌な思いをしてよく皆さん事故など起こさなかったと思う」「Aさんは上長からのハラスメントを証言していたが、上長に対して『逆パワハラ』みたいなことをしていたこともあった。電話を横で聞いていたことがあったが、『悪いのは私だけじゃない! お互いさまだ』と怒鳴り散らしていて、これを朝から晩まで聞かされるAMは大変だろうと思った」

 ちなみに、報道ではハラスメント加害者のような扱いを受けているAMだが、Aさんとは元同僚同士であり、以前は仲も良かったらしい。しかし先にAMのほうが昇格して「上司・部下」の関係性となってしまった。上昇志向の強いAさんにとっては、複雑な心境であった可能性も考えられる。

 これらの告発を見る限り、当初の報道内容と実相との間には溝があり、恐らくAさんをサポートするユニオン側も、「有名企業のワタミをたたくチャンス」とばかりに、Aさんの証言をうのみにして、全てワタミ側の悪意かのように書いてしまったのではないかと考えられる。記事論調を見ても、ワタミが悪であるという大前提に立脚しているようであり、個人のブログであればまだしも、「ニュース」を名乗る報道においてこの一方的な書きぶりは「偏向」といわれても反論できないのではないだろうか。

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