メディア
連載
» 2020年07月07日 05時00分 公開

働き方の「今」を知る:テレワークで剥がれた“化けの皮” 日本企業は過大な「ツケ」を払うときが来た (1/5)

テレワークで表面化した、マネジメント、紙とハンコ、コミュニケーションなどに関するさまざまな課題。しかしそれは、果たしてテレワークだけが悪いのか? 筆者は日本企業がなおざりにしてきた「ツケ」が顕在化しただけだと喝破する。

[新田龍,ITmedia]

 新型コロナウイルスの感染拡大に伴う緊急事態宣言の全面解除から、6月25日で早くも1カ月がたった。コロナ禍以前、全国の企業においてテレワークを導入済だったのは全体の約2割にすぎず、さらに実際にテレワークを経験したことがある従業員は1割にも満たない程度であった。

総務省「平成30年通信利用動向調査の結果」

 しかし、年明け以降の感染拡大と、4月16日から全国を対象に緊急事態宣言が出され、「出勤者7割削減」という方針が掲げられたことにより、これまでテレワークと無縁だった企業も動かざるを得なくなった。実際、宣言後は全国的に実施率が増加しており、東京商工会議所が6月17日に発表したデータによると、都内の中小企業では67.3%がテレワークを導入したという。

 ウイルスそのものに加え、ウイルスの影響による経済的な打撃も含めて、新型コロナは激甚な被害をもたらした天災であったが、その反面でわれわれに資すると考えられる点を挙げるなら、図らずも全国一斉にこうした「強制的テレワークお試し期間」が生まれたことであろう。テレワークしかり、業務のIT化やクラウド化など、これまでのやり方を大きく変革する試みは「何かトラブルが起きたらどうする!?」というネガティブな声に押されて往々にして中途半端になりやすいものであった。しかし今般は「命を守ること」を大義にテレワークせざるを得ない状況となった。この好機をうまく生かせたか否かが、今後のアフターコロナの世界で生き残れる企業かどうかを決するといっても過言ではない。

地方・中小企業にとっては一発逆転のチャンス

 「会社や客先に移動するための金銭的&時間的コストを削減できる」「事務所の家賃や光熱費も削減できる」「そこで生まれたリソースを本業で収益獲得する方面に回せる」「通勤ラッシュから解放され、従業員のワーク・ライフ・バランスにも好影響」――テレワークのメリットは既に語り尽くされているかのように思えるが、上記より見えにくく、かつ今後の事業発展の面からも意義深い要素がある。それは「災害時でも事業継続しやすくなる」ことと、「人材を確保しやすくなる」ことだ。

 前者は文字通り、地震や台風など天災に見舞われやすいわが国において、出社困難な状況であっても関係なく安定的に業務遂行できることはそれだけでアドバンテージになり得る。企業間でのビジネスにおいても、取引先選定の上で大切な要素であろう。

 また、これからの会社選びの判断基準において「多様な働き方を選択できること」は人材確保面において優位に働く。実際、「働き方の柔軟性は業種や雇用形態に関わらず仕事の満足度を高める」とのエビデンスも存在しており、複数企業から声がかかるような優秀人材を迎え入れたい企業にとっては差別化要因となるだろう。

 またそこまでハイスペックな人材を求めていないとしても、子育てや親の介護、病気やケガといったさまざまな事情によってこれまで「制約のある社員」扱いだった人が、場所や時間に関係なく働けるようになることで大いに戦力化することが期待できるし、「地方の無名企業だから」といった理由で採用に苦労していた企業でも、在住地に関係なく採用できるようになることもメリットといえよう。

 さらには、常々従業員満足度が低く、それによって生産性も低くなっていたような企業であっても、働き方の柔軟性を高める施策によって仕事満足度を高めていくこともでき得る。テレワークによる「働き方の多様化」は、特に地方の中小企業など「立地」や「知名度」でデメリットを被っていた企業にとっては一発逆転の機会にもなり得るのだ。

       1|2|3|4|5 次のページへ

Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.

アクセスランキング
  • 本日
  • 週間

    Digital Business Days

    - PR -