なお一連の騒動について、筆者はワタミ側の見解も聞いた。
――Aさん自身の問題もあるが、そもそも労務管理がきちんとなされていなかったことも問題では?
ワタミ担当者: その通りであり、引き続き改善を施していく。システム的にはまだまだ改善余地があると考えている。長時間労働につながる要因は実際存在するので、例えば「営業リーダーだから電話対応は当然』といった考え方ではなく、「土日にかかってくる電話はコールセンターで受けるようにしよう」など、会社として取り組んでいこうとしているところだ。
――この機に、社内労組から会社側に対して何かしらの申し入れはあったのか?
ワタミ担当者: 組合から要求があったこととしては、未払金があるなら明確にした上で支払いをすること、事実を明らかにしてほしいこと。あとは実務的な部分については、配達する弁当を冷凍対応にするなどだ。所長の週末対応をなくすために土日配送をなくすべきか、という議論もあったが、土日専属で対応してくれるスタッフの雇用を無くすわけにはいかない部分もあり、難しいところだ。
――本件には今後どのように対応するつもりか?
ワタミ担当者: Aさん本人は復職を希望しており、所属するユニオンから団体交渉依頼が来ている。こちらとしては公正な情報を提供すべく、第三者による「特別調査委員会」を設置して調査を開始している。団体交渉ではその調査結果を基にお話をすると伝えている。
アクト法律事務所の安田隆彦弁護士は、一連の事案について次のように語る。
「これまでのワタミの労務管理にもずさんなところがあり、問題はありました。しかしユニオン側の情報には偏りがあります。
確かに、被害者Aが自分に都合の悪いことをユニオン側に伝えなかった可能性もありますが、『ワタミの労務管理のずさんさをただす』目的を超えて、『ワタミが悪意にまみれた会社であるかのような一方的かつ名誉毀損的表現』になっていることは、誹謗中傷になってしまい行きすぎでしょう。
このような表現は、かえってユニオンの信用性を損なっております。今般、ユニオン側の主張と異なる見解がワタミ従業員側から出てきたことで、ユニオンがどう向き合うのかが注目されます」
初報以降、Aさん側の一方的な情報を後追い報道するだけのメディア各社の姿勢にも疑義がある。Aさん以外の関係者にヒアリングするだけでも、既報とは異なる情報がこれだけ出てくるにもかかわらず、自分たちの足で取材するという気概に乏しいのではないだろうか。ぜひ多角的な視点で報道がなされることを期待したい。
なお、本記事が「一面的」な記事にならないよう、筆者はAさんをサポートしている「総合サポートユニオン」に対しても取材を行った。しかし、当初設定した返答期限までに返答は得られず、再度日程を延長して申し入れた取材に対しても回答が返ってくることはなかった。
本件については今後、12月中にも第三者による特別調査委員会の報告が公開される予定である。筆者も引き続き経過を追ってお伝えしていく。
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