#SHIFT

【独自】ワタミ「ブラック企業に逆戻り」騒動 内部取材で明らかになった、衝撃のウラ話を暴露する告発された「パワハラ」の実態(9/10 ページ)

» 2020年11月05日 05時00分 公開
[新田龍ITmedia]

なぜワタミの社内労組は機能しなかったのか

 先述したようにワタミには、アルバイトを含む全従業員を対象とした労働組合「ワタミメンバーズアライアンス」が存在する。当然Aさんも組合員であるはずなのだが、今回の報道にもある通り、Aさんは外部のユニオン(合同労組)である「ブラック企業ユニオン」に加盟してワタミと交渉を行っている。記者会見でもAさんは「(社内労組に)一度相談したのに何もしてくれなかった。信用できないから依頼しない」と発言しており、当然「社内労組は何をしていたのか?」という疑問が生まれるところだ。

ワタミの労組は何をしていたのか?(出所:ワタミメンバーズアライアンス会員Webサイト)

 しかし、Aさんが社内労組へ連絡をしたタイミングは、前述のやりとりが全て終わった休職後で、労災申請がなされ、労基署から出頭要請がなされた後のことであった。そして問い合わせ内容も未払金などに関するものではなく、「誰が私を訴えようとしているのか、個人の名前を教えろ」という要望だけだったのだという。

直接やりとりしたが……

 事態を重く見た労組委員長は直接Aさんとやりとりし、「会社にも確認をとったが、個人情報なので伝えられない。未払金などは相談に乗る」と伝えたが、Aさんからは「聞きたいのは私を訴えようとしている者の名前だけ。自分も組合員なのに教えられないのか。ワタミ労組も会社寄りなのか」と言い放たれて会話が終わってしまった。

 労組委員長は一連のやりとりに対し、こう述懐する。「Aさんとは職場集会で以前会っている。その時点でアライアンスの存在は認識していたはずだし、単に未払賃金に関する相談であれば、先に組合に連絡していたはず」「訴えると言われたことにナーバスになっていたタイミングで、こちらからアクションを起こし、直接会って話すなどのことができなかったのが心残りだ」

 なお、ワタミメンバーズアライアンスは民間労組として日本最大規模を誇る「UAゼンセン」傘下にあり、アライアンス委員長もAさんのサポート方針についてゼンセン幹部に相談した。Aさんが社内労組を脱退せず、かつ組合員であることを認めているのにサポートを断っていることについてはゼンセン幹部も疑義を抱いており、ブラック企業ユニオン側にもただしていくという姿勢とのことだ。

 報道の裏側でどんなことが起きていたのか。これらは取材を通じて、明らかになった一部始終である。いかに、既報がAさん側からの一方的な情報しか出していないかお分かりいただけたのではないだろうか。本件の取材にあたっては、Aさんの元同僚や元部下の方々にも話を聞いたが、皆さん口々に報道の異様さを指摘され、かつ加害者扱いされているAMへの配慮、そしてAさんへの非難を口にされていたことが大変印象深い。

 また、繰り返しとなるが、インタビューの最後に念押しのように皆さんから言われたのが、「Aさんからの報復が怖いから、自分が発言したと分からないように書いてほしい」ということであった。「Aさんが復職するなら自分達が辞める」「Aさんがいなくなったことで復職してきたスタッフもいる」「Aさんが辞めたとしても、日常の業務を妨害されるリスクが恐ろしい」と、尋常ではない恐れられ方であったことも特筆すべきであろう。

Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.