ここで、フジテレビに限らず、多くの企業に通じる疑問が浮かぶ。果たして、会社員個人のSNSはどこまで所属企業のものなのだろうか――?
例えば、実名で投稿している会社員のSNSアカウントにはこう書かれていることが多い。
※ツイートは個人の見解です。所属する組織とは一切関係ありません。
これが通用するのであれば――フジテレビの女性アナウンサーたちの罪は軽減されるはずだ。彼女たちも「美容室のサービスが良かったのは個人の見解です。フジテレビとは一切関係ありません」で通したいのではないだろうか。
ただ、騒動の反響を見るに、それはまかり通らなかったということだ。しかし、顔を出している女性アナウンサーたちは、個人の見解と所属先の見解を分けることができない一方で、特に有名人でない会社員たちは「※ツイートは個人の見解です。所属する組織とは一切関係ありません」の一言で乗り切ることができるとしたら、それはおかしな話に感じる。
いくら個人と企業の見解は別、と主張してみたところで、その見解にたどり着くための情報は、その会社の社員であるから得られた情報によって形成されることも少なくない。そもそも「見解」にまで至らず、「うちの会社に有名人の●●が来た」など、社員だから得られた情報を垂れ流しするだけのような投稿もときには散見される。
Twitterが定着して10年以上の時がたつ。実名を出すことで有名になっていく実例も多く存在するこの時代において、「個人で注目を浴びたい」思いが先走り、その燃料になるのであれば、会社のおかげで得られた情報や特権をフルに注入している人は多い。にもかかわらず「見解は別」と主張し、リスクは避けようとするのはいささか説明足らずで、傲慢な行為にも思える。
新聞社の社員記者が差別的発言をしたら、その新聞社に責任は一切ないのだろうか? Clubhouse上で、記録が残らないからといって、テレビ局の局員が局名を明かした上で、その立場だから得られたタレントの裏話をしているのは許されるのだろうか? 芸能事務所からしたら、テレビ局員に自社の“商品”の機密情報を漏らされていることにはならないのか。さまざまな疑問が生まれることになる。
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