問題は、東証第一部上場企業全銘柄の株価を指数化したTOPIXだ。結論からいえば、新市場区分下のTOPIXについて、直ちに影響はない模様だ。
日経平均などもそうだが、TOPIXをはじめとした指数で最も重要な点が「指数の連続性」だ。銘柄を入れ替えたり、基準が変わったりすることによって利害関係者が不利益を被ることは絶対に避けなければならない。その結果、新市場区分においてTOPIX指数は一気に様変わりするというよりも、旧市場区分から移行するインパクトを最小限に止めようと工夫がなされている。
大きな変更点は、今後のTOPIXが市場区分ではなく、流通株式の時価総額を重視するように決まったことだ。これまでは東証第一部上場企業であれば全て指数に組み込まれたが、今回は流通株式比率などの観点で、収益や流動性の点でプライム市場並みの基準を満たす銘柄であっても、スタンダード入りする大手企業も少なくない。
東証第一部の遺伝子をプライム市場から引き継ぐといっても、即時でTOPIXをプライム市場指数に適用してしまえば、スタンダード入りしそうな株式の大幅な売りと、プライム入りする株の大幅な買いが一気に流入し、市場は混乱してしまう。
そこで、東証は市場区分だけでなく、流動性基準の中にもある「流通時価総額100億円超」を重視し、21年の10月に基準を満たさなかった銘柄について、四半期ごとにウェイトを低減する形で市場区分の変更とTOPIXの影響を軽減する。これは25年1月まで段階的に実施されていくことから、短期的な混乱は避けられるだろう。
また、相当程度見直しが進んでいけば、従来のTOPIXの課題でもあった、衰退していたり、成長していなかったりした企業も自動的に指数に組み込まれ、TOPIX連動商品の投資家が間接的にこれらの銘柄を買ってしまう可能性も低まる。結果として、中長期的には市場区分の変更はTOPIX自体にはプラスであると捉えることもできるだろう。
中央大学法学部卒業後、Finatextに入社し、グループ証券会社スマートプラスの設立やアプリケーションの企画開発を行った。現在はFinatextのサービスディレクターとして勤務し、法人向けのサービス企画を行う傍ら、オコスモの代表としてメディア記事の執筆・監修を手掛けている。
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