おっさんの胃袋をわしづかみ、“肉撃”ですぐさま利益改善を遂げた大阪王将:本当の顧客は誰か?(2/3 ページ)
中華料理チェーン「大阪王将」などを展開するイートアンドは一昨年、ターゲット顧客と商品戦略の見誤りなどから営業利益を大きく下げた。そこから戦略を練り直し、すぐにV字回復したわけだが、その取り組みとは一体――。
おっさんの胃袋をわしづかみ
その反省から、誰が大阪王将の顧客なのかということを改めて見つめ直した結果、今まで店に来たことのない顧客を狙うのではなく、既存顧客のニーズを徹底的に掘り起こす方が、商売として正解であるはずだと考えた。
「大阪王将のメイン顧客は中高年の男性。彼らは高級食材を使った値段の高い餃子なんて望んでいなかった。それよりも安くてうまい餃子や、牛肉がたっぷり乗ったチャーハンを欲している。おっさんたちの胃袋をわしづかみにする商品を出す店でなくてはならないのだ」(文野社長)
そこから原点回帰を図り、既存顧客に対する積極的なアプローチを試みた。安い、うまい、ボリューム満点といった男性のヘビーユーザーが感動するような商品メニューを開発したのだ。
その代表例が“肉撃!”キャンペーンである。2015年6月に期間限定で発売した「絶品厚切り肉盛り炒飯」を皮切りに、「頬張る!ステーキ回鍋肉」、「絶品厚切り肉盛り赤炒飯、黒炒飯」などの新商品を次々と投入した。
メニュー開発にあたって社内で合言葉としたのが“食欲直撃”。お腹を空かせた男性客が喜ぶものは何かを考えた末、牛肉や豚肉がご飯の上に乗ったようなメニューが最適だとなった。イートアンドでは肉をメインにした別業態を展開しており、そこでの経験からも男性客にうけるはずだと確信を持ったという。
成果は如実に現れる。通常の期間限定メニューの場合、店舗の売り上げ全体に占める比率は平均3%程度だが、このキャンペーン商品は5%を超えた。特に東京や大阪の繁盛店ではさらにその比率が高まった。さらには店頭に掲げたキャンペーンのPOP広告を見て入店する外国人客が増え、そうした店舗では10%以上になることもあったという。
こうした取り組みの結果、再び客足は増えて業績は回復し、2016年3月期の営業利益は前年から1億8600万円増の4億6900万円を見込んでいる。「ターゲットを明確に絞り込んだ施策を打ったことで利益は大きく改善した」と文野社長は胸を張る。
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