加速するフィンテック なぜ銀行の既存ビジネスを破壊するのか:加谷珪一の“いま”が分かるビジネス塾(2/4 ページ)
金融(ファイナンス)と技術(テクノロジー)を組み合わせたフィンテック。日本はこの分野では既に周回遅れになっているとも言われるが、徐々に環境は整備されつつある。フィンテックの現状について整理し、今後の展望について考えてみたい。
動きが活発なのは融資・資金調達系
近年、動きが活発なのが融資・資金調達系のサービスである。冒頭のみずほ銀行とソフトバンクの合弁会社はまさに融資系のサービスということになる。先ほどのコンテストでも、少額のお金を集めたり、送金できるサービスを提供しているアイムイン(I'm in.)が入賞している。
不特定多数の人がネット上でプロジェクトに対して資金を提供する仕組みのことをクラウドファンディングと呼ぶが、既にこの分野では「READYFOR」「Makuake」「CAMPFIRE」など多数のサービスが立ち上がっている。クラウドファンディングは、地方の古民家再生プロジェクトや車いすの修理費用の調達など、比較的少額で社会性の高い案件が多い。
READYFORはもともと東京大学系のベンチャーとしてスタートした企業であり、CAMPFIREは起業家として有名な家入一真氏らが設立した。Makuakeはサイバーエージェントが運営している。既に月間10億円以上の資金がこうしたクラウドファンディングを経由して調達されており、社会の一部として定着しつつある。
融資・資金調達と同じく、このところ大きな盛り上がりを見せているのが、AIやキュレーションなどITを活用した資産運用系のビジネスである。
資産運用コンサル事業など展開する財産ネットは、株価に影響を与えそうなニュースに対してアナリストやトレーダーが、ポジティブかネガティブかを投票し、その結果をネット上で利用者に通知するサービス「兜予報」を提供している。いわゆるアナリスト・コンセンサスということになるが、リアルタイム性を重視している点で従来のサービスとは異なっている。このほか、現在の年収や資産構成などを入力するとWeb上でライフプランを提示する資産管理サービスの試験運用もスタートした。
資産管理系のフィンテックとしては家計簿アプリなどを提供するマネーフォワードがよく知られている。マネーフォワードは銀行口座などとの連携が可能となっており実用度が高い。日々の支出管理もスマホ連動型となっており、レシートをスマホで撮影すれば結果が自動的に反映されるなど、非常に便利な仕組みだ。クラウド上の会計サービスを提供するFreeeも同様の家計簿アプリを提供している。
これまでも家計簿ソフトというものはたくさんあったが、あまり普及していなかった。その理由は恐らく煩わしさにあると考えられる。従来の家計簿ソフトは、PCに向かっていちいち入力する必要があり、これが利用者層を限定していた可能性が高い。スマホという常に身につけるデバイスが普及したことでこの障壁がなくなり、市場が一気に拡大する可能性が見えてきたのだ。
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