加速するフィンテック なぜ銀行の既存ビジネスを破壊するのか:加谷珪一の“いま”が分かるビジネス塾(3/4 ページ)
金融(ファイナンス)と技術(テクノロジー)を組み合わせたフィンテック。日本はこの分野では既に周回遅れになっているとも言われるが、徐々に環境は整備されつつある。フィンテックの現状について整理し、今後の展望について考えてみたい。
日本でもようやくビットコインの法整備が進む
ここまで説明してきたフィンテックは、銀行を中心とする既存の金融機関のサービスを補完したり、金融機関と共存できるサービスということになる。だが、これから説明する海外送金や仮想通貨という分野は、場合によっては、銀行のビジネスモデルそのものを破壊する可能性を秘めている。実はフィンテックが持つ本質的な意味はここにある。
仮想通貨といえばビットコインが代表的だが、日本ではビットコインの法整備がかなり遅れていた。2014年に国内の取引所である「マウントゴックス」が経営破綻(たん)したことから、ビットコインをどう位置付けるのか国際的な議論となった。日本国内では、新しい技術に対するヒステリックな反発が根強く、政府はいち早くビットコインを「通貨」ではなく「モノ」であると位置付けてしまったのである。
一方、米国など主要各国は、ビットコインの将来性を考え、逆に通貨として認める方向制で法整備を進めてきた。今ごろになって政府は日本が国際的に取り残されていることに気付き、改正資金法を可決して、ようやくビットコインを準通貨として位置付けた。粘り強く立法活動を進めてきた与党内の一部議員の存在がなければ、日本は半永久的にビットコインの市場から閉め出されていたかもしれない。
ビットコインには、国家の管理を必要としない新しい通貨という側面と、世界各国共通で利用できる決済手段という2つの側面がある。前者は中央銀行など政府が持つシニョリッジ(通貨発行益)を、後者は銀行が持つ送金というビジネス領域を脅かす可能性があり、潜在的な影響力は大きい。ビットコインのビジネスはリスクもあるが、大きな可能性を秘めているとみて良いだろう。
関連記事
- 国産初のジェット機MRJ 実はあまり収益に期待できない理由
初の国産ジェット旅客機であるMRJの開発に黄色信号が灯っている。三菱重工業は既にMRJの開発に4000億円近い費用を投入しているとも言われるが、プロジェクトとして利益を上げることはかなり難しくなっている。MRJには三菱の顔としての役割があるものの、全社的な収益にはほとんど貢献しない可能性が高いのだ。 - モスとマックの業績が急回復 それでも安心できない両社共通の悩みとは?
このところ、モスフードサービスとマクドナルドの業績が急拡大している。その理由とは? この流れは今後も続くの? 経済評論家、加谷珪一が解説する。 - 「渋滞予測」「異常検知」 2020年、テクノロジーは東京の安全をどう守るのか
近い将来、テクノロジーの進化によって、あらゆる“渋滞”をなくすことができるかもしれない――。いま、人(集団)の行動を分析して、渋滞や危険を予測する研究が進んでいる。 - 活躍できる職場をAIがレコメンド 人事業務の最適化で「輝ける人を増やす」
採用活動、人事配置などの人事業務は属人的な判断に頼る部分が多く、まだまだ合理化されていない領域の1つだ。そのような中、人事業務にテクノロジーを掛け合わせた「HRテック」(Human Resource Technology)と呼ばれる取り組みが本格化しつつある。
Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.