10速オートマの登場、まだまだ消えないMT車:池田直渡「週刊モータージャーナル」2016総集編(1/4 ページ)
2016年も間もなく終わる。そこでこの1年を締めくくるべく、「週刊モータージャーナル」の連載記事で好評だったものをピックアップしたい。
2016年も残すところわずかである。おかげさまで今年は「ITmedia ビジネスオンライン」に49本もの連載記事を執筆した。自分でもよくぞ毎週毎週書くことがあるものだとちょっと呆れるのだが、読んでくださる方がいるからこそ書き続けることができるわけで、深く御礼申し上げる次第である。
この1年、いったいどんな記事が読者の皆さんの興味をひいたのかを編集部に調べてもらった。結果、記事アクセスランキングのベスト5は以下のようになった。
何と、1位、2位は具体的なクルマの話でなく、トランスミッションの話。それと、ビジネスニュースとしては今後の20年の自動車産業を占う重要な「トヨタの提携戦略」など、ビジネスパーソンの読者が気になるような記事もあったのだが、それはベスト5には入らなかった。けっこう工学的な話が読まれているのも意外な結果だった。おもしろいものである。
さて、こうした人気記事を振り返ろうとするが、どれもそれなりに複雑な話で簡単にはまとまらない。詳細は各記事のリンクで読んでいただくにしても、概要くらいはまとめ直さなくてならないだろう。
ついに「10速オートマ」の時代が始まる
これはトランスミッションの多段化とは本質的にどんな意味があるのかという話だ。
近年、欧州で主流になっている小排気量ターボは決して万能ユニットではなく、高回転で使うとエコ性能がガタ落ちする。これを低燃費ユニットたらしめているのは低回転で過給して低速トルクを上げ、トランスミッションを駆使してそうした低回転を徹底的に使うという手法である。
だから、ドライバーがアクセルを極端に踏み込むような操作がない限り、ずっと低回転だけを使っていたい。トップギヤで低い回転数にするためにはトップギヤのギヤ比を小さくしなくてはならない。一方でローギヤが高いと発進が辛くなる。両方を解決するには、トランスミッションの一番低いギヤと高いギヤの比率を大きくとる必要がある。ローからトップまでのギヤ比差(レシオカバレッジ)が大きくなるので、ギヤの段を増やさないと一段あたりの段差が大きくなり過ぎてレシオをスムーズにつなぐことができなくなる。そのための多段化だ。
ホンダが10速オートマを出してきたのは、従来のハイブリッドだけでなく小排気量ターボもラインアップに加える戦略に変わったからで、実際、ステップワゴン用に小排気量ターボユニットを搭載し始めた。ただし、これはまだ10速オートマではない。
恐らく、欧州など巡航スピードの高い国への対応として10速オートマは採用されるはずだ。日本の制限速度100キロだと、レシオカバレッジで10倍を目指す10速オートマは少々オーバースペックだからだ。ただし、それも第二東名高速の120キロでこれから変わっていくかもしれない。最高速度の変化はクルマのエンジニアリングにも影響を与えるのである。
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