東京都の「選ばれし6路線」は実現するのか:杉山淳一の「週刊鉄道経済」(2/6 ページ)
東京都は「平成30年度予算案」に「東京都鉄道新線建設等準備基金(仮称)」の創設を盛り込んだ。2016年に交通政策審議会が答申第198号で示した24項目のうち、6路線の整備を加速する。6路線が選ばれた理由と、選ばれなかった路線を知りたい。
・東京8号線(約1500億円)
江東区が切望している路線。豊洲と住吉を南北に結ぶ。東京メトロ有楽町線と相互直通運転を構想している。同区は南北方向の鉄道路線が少なく、都営バスで補っている。この路線は東西方向の鉄道路線を連絡する主要鉄道路線として期待されている。
・東京12号線(約900億円)
都営地下鉄大江戸線の計画路線。放射部の終点、練馬区の光が丘駅から延伸し、同区の大泉学園町に至るルート。建設予定地は都道443号線延伸部として先行的に整備されており、大江戸線の建設に配慮した設計になっているという。大泉学園町より先は埼玉県新座市、清瀬市を経由して、所沢市のJR武蔵野線東所沢駅までが答申されている。埼玉県側からの期待が大きく、大泉学園までの延伸実現は誘致活動に弾みがつきそうだ。
・多摩都市モノレール 上北台〜箱根ケ崎(約800億円)
多摩都市モノレールの北端、東大和市の上北台より西へ進み、西多摩郡のJR八高線箱根ケ崎駅に至るルート。新青梅街道上空に建設されるとみられる。
・多摩都市モノレール 多摩センター〜町田(約1700億円)
多摩都市モノレールの南端、多摩センターから南下し、町田市に至るルート。都道156号線、都道47号線を経由し、中間部は都道の新設を伴う。
多摩都市モノレールは多摩地区の鉄道空白地帯解消と、立川を結節点とした南北交通整備の役割がある。開業当初から乗客数は順調に増えており、東京都の支援によって債務も減り、08年度より黒字。利益も増えつつある。北側の箱根ケ崎でJR八高線と接続し、南側の町田で小田急、JRと接続すると、南北方向の新たな交通の流れができる。
関連記事
- 東京圏主要区間「混雑率200%未満」のウソ
お盆休みが終わり、帰省先から首都圏に人々が帰ってきた。満員の通勤通学電車も復活した。国も鉄道会社も混雑対策は手詰まり。そもそも混雑の認定基準が現状に見合っていないから、何をやっても成功できそうにない。その原因の1つが現状認識の誤りだ。 - 東京都政「時差Biz」は「都民ファースト」ではない
東京都が実施した「時差Biz」キャンペーンを覚えているだろうか。通年キャンペーンだと思ったら、7月11日から2週間のキャンペーンだった。「満員電車を解消するために、2週間の早朝通勤を試してみませんか」という話だ。このキャンペーンで、都民は満員電車から解放されただろうか。 - 2018年、鉄道の営業力が試される
「企業として、需要があるところに供給する。そういう当たり前のことを、鉄道事業者はやってこなかったのではないか」。つい先日、ある第三セクター鉄道の社長さんに聞いた言葉だ。小林一三イズムが落ち着き、人口が減少傾向にある中で、鉄道の営業努力が試される。2018年は、そんな時代になると思う。 - 小田急電鉄の「戦略的ダイヤ改正」を読み解く
小田急電鉄は2018年3月のダイヤ改正を発表。4カ月も前に詳細を発表した背景には「4月から小田急沿線で新生活を始めてほしい」という意図がある。混雑緩和だけではなく、増収に結び付ける狙いだ。 - 東海道貨物支線の旅客列車運行計画はどうなった?
東海道本線の東京〜横浜間と並行する東海道貨物支線を貨客併用化する構想がある。協議会発足から約17年。まだ整備に着手されていない。この路線の進捗(しんちょく)はどうなっているのか。
Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.