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東京都の「選ばれし6路線」は実現するのか:杉山淳一の「週刊鉄道経済」(3/6 ページ)
東京都は「平成30年度予算案」に「東京都鉄道新線建設等準備基金(仮称)」の創設を盛り込んだ。2016年に交通政策審議会が答申第198号で示した24項目のうち、6路線の整備を加速する。6路線が選ばれた理由と、選ばれなかった路線を知りたい。
除外された14路線
交通政策審議会の答申198号は、東京圏の鉄道建設、延伸に関して24のプロジェクトを挙げた。これらのプロジェクトは優先順位を示さず、目標年度を2030年頃とするにとどまった。今回、東京都が実現に向けた基金を創設することで、対象の6路線が事実上の最優先課題に格上げされたとみていいだろう。
格上げされなかった路線はどこだろうか。まず、事業地域が東京都ではなく、周辺部にある場合は除外される。東京都が積極的に関与できないから当然だ。
- 埼玉県内のプロジェクト
- 東西交通大宮ルートの新設(約400億円)
- 埼玉高速鉄道線の延伸(約3200億円)
- 神奈川県内のプロジェクト
- 川崎アプローチ線の新設(約300億円)
- 小田急小田原線の複々線化(約1493億円)
- 小田急多摩線の延伸(約1300億円)
- 東急田園都市線の複々線化(約800億円)
- 横浜3号線の延伸(約1700億円)
- 横浜環状鉄道の新設(約7700億円)
- いずみ野線の延伸(約1200億円)
次に、東京都を通るけれども、受益者の主体が他県というプロジェクトが外されている。周辺の県境にまたがるため調整が必要。東京都独自では着手しにくい路線だ。
- 受益者の多くが千葉県、埼玉県の在住者である
- 東京8号線の延伸(押上〜野田市、約5800億円)
- 東京11号線の延伸(約3800億円)
- 受益者の多くが千葉県在住者である
- 総武線・京葉線接続新線の新設(約6200億円)
- 京葉線・りんかい線相互直通運転化
- 受益者の多くが神奈川県在住者である
- 東海道貨物支線貨客併用化(約5500億円)
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