なぜ伊藤忠は18年ぶりに「独身寮」を復活させたのか:水曜インタビュー劇場(男子公演)(3/6 ページ)
伊藤忠が18年ぶりに「独身寮」を復活させた。業績低迷を受けて、2000年に社有の寮を売却したのに、なぜこのタイミングで建てたのか。建物は7階建てで、部屋は361室。国内最大級の寮のナカはどうなっているのかというと……。
「引っ越しさせてください」の声
田村: 会社から遠いところ、駅から遠いところに住んでいる人たちは、早々に寮を去っていたんですよね。出入りが激しかったからか分かりませんが、成城学園前と鷺沼の駅近に住んでいた人たちはよく飲み会などのイベントを行っていましたが、仲町台と鷺沼の駅遠に住んでいた人たちはあまりでして。
土肥: 関係が希薄になっていたわけですね。仲町台と鷺沼の駅遠に住んでいた人たちから「引っ越しさせてくださいよ」といった声が多かったのでは?
田村: 会社のルールに沿って部屋を決めているので、彼らの引っ越しを認めるわけにはいきません。「自分の意見を聞いてもらえないのか。じゃあ、寮を出よう」と考えた人が多かったのかもしれません。寮に入って1年も経たないうちに退寮して、ひとり暮らしをする人がたくさんいました。こうした背景もあって、新しくつくった寮は駅から徒歩3分ほど、会社まで30分ほどで着くところに構えました。
以前は4カ所に分散して寮を設けていたわけですが、「このままでいいのか」といった課題を感じていました。年代や部署が違っても「ひとつ屋根の下」で暮らせば、コミュニケーションを深めることができるのではないか。当社には「繊維カンパニー」「機械カンパニー」などがあって、グループが違えばその人たちと会話をする機会がほとんどないんですよね。
寮で「タテ・ヨコ・ナナメ」のコミュニケーションができれば、横のつながりが生まれる。そこから仲間意識が生まれて、将来何らかの役に立つのではないか。結果、組織力が強くなると考え、入社1〜4年目の独身男性には原則全員入寮してもらうことにしました。
土肥: 以前の寮も全員が入っていたのですか?
田村: いえ、いくつかのルールがありました。例えば、会社から実家の距離に応じて、寮に入れる、入れないといった感じで。
土肥: 新しい寮にはほぼ全員が入っているということですが、そのルールを決めるときに反対の声はなかったですか? 「ちょっと、いまの時代に合わないんじゃないの?」といった具合に。
田村: 「最近のライフスタイルを考えると、プライベート重視のほうがいいのでは」「強制するのはよくないのでは」といった意見がありました。ただ、実際は強制していなくて、“できる限り入ってください”といった表現で伝えています。
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