ソースネクスト、法人市場参入を正式発表、「パソコンソフトは文具」と松田氏

ソースネクストは6月17日、法人市場への進出を発表した。パソコンソフトをボールペンのような文房具と同様のレベルで扱う波が企業にも押し寄せようとしている。

» 2004年06月17日 14時20分 公開
[西尾泰三,ITmedia]

 ソースネクストは6月17日、都内で発表会を開催し、法人市場への進出を発表した。2カ月前に取材した内容が正式に発表されたといえる。

「Oracle JDeveloper 10g 1Year Limited」のパッケージを手にする松田氏と新宅氏

 基本的な路線としては、同社が2003年2月からコンシューマ市場で進めている「コモディティ化戦略」の成功を受け、それを法人にも拡大した格好で、同社の主力ソフトウェアを1980円で販売していくものとなる。

 同社の代表取締役社長の松田憲幸氏は、法人市場における従来のソフトウェア導入の概念は、IT部門が「プロジェクト」として導入を検討し、メーカーは「ソリューション」を提案し、ユーザーごとに「カスタマイズ」を施すといったプロセスを経て、巨額の初期投資や継続的なサポート・メンテナンスのコストを必要とするものだったと話す。

 しかし同氏はそうした状況を覆すかのように「パソコンソフトは文具」と続け、企業の日常業務の効率化を手軽に図れるツールとしてのソフトウェアを提供することでコモディティ化を拡大させていく考えだ。

新しく登場したロゴマーク

 法人市場に向けた製品ラインアップは、コンシューマ市場でも人気を博しているPDF作成ソフト「いきなりPDF」を主軸に、23ジャンル、50タイトルが用意され、2004年3月までに100タイトルまで拡大する予定だとしている。デジタル百科事典の「マイペディア」や、先日事業提携を発表したNRI セキュアテクノロジーズとの共同開発によるアンチウイルスソフト「ウイルスセキュリティ2005」や、セキュリティホールのチェックだけでなく、システム全体でセキュリティ上問題となりうるアプリケーションなどもチェック可能な「SecureCube/PC-Check エンタープライズ版」なども順次発売が予定されている。

 また、売り上げについては、2004度で10億円、2009年度までに年商200億円を目指すとしている。なお、後述する「Oracle JDeveloper 10g 1Year Limited」については、今年度で10万本の販売を目指している。

 ちなみに、総額表示制に伴い、実際には2079円として販売されている現状については、6月4日以降の新製品に関しては、税込みで1980円で販売していくことが明らかにされた。

サイボウズやデルのビジネスモデルも参考に

 法人市場に参入するにあたっては、社内に法人営業チームを立ち上げ、10名程度のスタッフがそれに従事することになる。その総括を行うのが同社取締役の藤本浩佐氏であり、現場のマネージャーとして小嶋智彰氏がアサインされている。

 また、サイボウスやデルのビジネスモデルを参考にしているという。今後、評価のために顧客に試用してもらうことなども視野にいれていると藤本氏は話す。

「1980円の製品なので、営業に持たせておいて、お客様に試用してもらうことも気軽にできる」(藤本氏)

 藤本氏は、狙っていくターゲットとして「1000人以上の規模を持つ大企業の部門単位」などを例として挙げる。同氏の言葉を借りるなら、同社が狙うのは、全体的ななリプレイスではなく、あくまで部分的なリプレイスであるという。

 業務上クリティカルな部分はMicrosoft Officeなどをそのまま使い、リプレイスしても大きな影響が出ない部門や部署への導入を促していく考えだ。

「ボリュームライセンスであれば、10ライセンスで1万7820円、50ライセンスで8万4150円となる。課長や部長の裁量権で気軽に導入が可能な値段といえるのではないでしょうか」(小嶋氏)

法人市場進出に死角なし?

 法人市場に進出するにあたって、同社の不安要素を挙げるなら、そのサポート体制が挙げられる。特に、ソフトの問題でビジネスの流れを止めてしまっては、価格がいくら安くても問題となる。しかし、現状はサポート体制について、コンシューマ市場と同様のメールサポートのみで対応するとしている。

「特別サポートが必要となるソフトウェアではないと考えており、土日でも対応するメールベースのサポートで問題ないと考えている」(藤本氏)

 これは、前述した「部分リプレイス」の考えがあるため、手厚いサポートなどが必要な部門であれば、高価であっても既存のソフトをつかったほうがいいのではという同社の考えを表したものであるといえる。

 また、1年ごとのライセシングも気になる。個人ユーザーであればともかく、企業で大量に導入する際、1年ごとにユーザーに新しいバージョンをインストールさせるのはユーザーに負担となり得る。

 この点については、StarSuiteであれば、新しいシリアルナンバーを入力するだけで更新可能で、ソフトの新規インストールは必要ない。また、Oracle JDeveloper 10g 1Year Limitedについては、ライセンス証明書を取得することで、こちらも継続して利用可能だ。

 そのほかの製品については、現状では1年ごとに新製品を新規にインストール必要があるが、StarSuiteで採用しているものと同様の方式になっていくことも予想されよう。

開発環境も1980円で

 松田氏は同社の製品ラインアップを用途でカテゴリ化した際、「開発環境」が抜けていることから、この部分の補完を望んでいた。2004年4月に入って日本オラクルから「Oracle JDeveloper 10g」をコモディティ化戦略の一環にしたいとオファーがあったという。

 日本オラクルにとっては、ソースネクストの個人向けチャネルを通じ、Java開発者人口の拡大を図っていくことが狙いにあり、これまで13万円を超える価格だったものが1980円になったインパクトを伴って普及させたい考えだ。

 同製品のサポートについては、インストール方法や基本的な操作などの部分のサポートはメールベースで行えるが、正式なフルサポートは付属しない。そのため、利用してみてサポートが必要であると感じるなら、既存の製品を購入することになる。

 しかし、オラクル技術者の会員登録制コミュニティサイト「Oracle Technology Network Japan」への参加は可能で、開発者の間口を広げることになるのは間違いない。発表会に同席した日本オラクルの新宅氏も「これは日本オラクルにとって大きなスタート。今回の発表でJavaの『スーパー開発者』を育成したい」と期待を寄せる。

 基本的な業務で使うソフトを特別な目で見ることなく、デスクの上にある文房具のように。コスト削減効果に目を捉われがちだが、こうした新たなコンセプトも法人市場にもたらすソースネクストの活躍が期待される。

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