LinuxWorld:奇問と皮肉で盛り上がった雑学コンテスト

LinuxWorld Expoの名物イベント「Golden Penguin Bowl」は、今回も期待を裏切らない盛り上がりを見せた。

» 2004年08月09日 19時42分 公開
[IDG Japan]
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 空席が目立つモスコーニセンターのホールの観客の大半が、黒いハッカー/GNU Tシャツを着て、マウンテンデューの緑色のペットボトルを握りしめた男たちで占められていたとしたら、それはLinuxWorld Expo恒例の「Golden Penguin Bowl」の会場だ。これは、NerdsチームとGeeksチームが、自慢話をする権利と“あこがれの”Golden Penguin杯を求めて競い合うというイベントだ。

 このコンテストはいわばコンピュータマニア向けの「Jeopardy」(訳注:米国の人気クイズ番組)のようなもので、参加者はビットアドレス式マイクロプロセッサ、対称型マルチプロセッシングシステム、BSD、B級SF小説などに関する知識を試される。このイベントは先週、サンフランシスコで開催されたLinuxWorld Expoで行われた。

 毎回、辛辣なコメントや予想外の質問が飛び交うGolden Penguin Bowlだが、今年も期待を裏切られることはなかった。両チームの実力は伯仲していたが、最終的にNerdsチームが僅差で勝利を収め、昨年失ったタイトルを奪還した。

 競技の司会役を務めたジェレミー・アリソン氏(Sambaの開発者)は、コンピュータギーク(おたく)としての能力とゲームショウの司会者としての才能を発揮した。銀と白のスパンコール飾りが付きのタキシードに身を固めて舞台の上を軽快に走り回る姿はとても技術系の人間とは思えず、まるでリチャード・ドーソンとエルトン・ジョンを足して2で割ったような感じだった。

 Nerdsチームのメンバーは、アンドリュー・モートン氏(Linuxカーネル2.6のメンテナー)、ティム・ウィザム氏(Open Source Development Labsのディレクター)、そしてグレッグ・クローハートマン氏(IBMのLinux技術センターのカーネルメンテナー)。対するGeeksチームのメンバーは、Apple Computerの3人の社員で占められていた。ジョン・ハバード氏(BSD技術グループの技術マネジャー)、ステュアート・チェシア氏(シニアエンジニア/Rendezvousアーキテクト)、そしてドミニック・ジャンパウロ氏(ファイルシステムアーキテクト)である。

意表を突いた映画の質問

 競技はスローペースでスタートした。アリソン氏の最初の質問は、「映画『Matrix』でエージェント・スミスを演じ、『Lord of the Rings』ではエルロンドの役を演じた俳優はだれか?」というものだった。競技参加者たちは呆然とした表情で沈黙した。「いきなり長丁場になりそうですね」とアリソン氏。Nerdsチームのハバード氏が思い切って答えた――「ファーストネームはヒュー」。しかし名前の一部だけでは得点にならないと審判団は判断、Nerdsチームはポイントを失った。

 Nerdsチームはその後、Appleの「Lisa」に関する質問に正解してリードした。どうやら、コンピュータに関するオタク的な質問に答える方が、映画に関するオタク的な質問に答えるよりも簡単なようだ。

 別の質問でアリソン氏はコードの一部分を見せ、これがBSDとLinuxのどちらのカーネルコードであるか尋ねた後、「まあ、どっちでもいいか。どのみち、SCOがすべて所有しているのだから」と軽口を飛ばした。Linuxに対する同社の著作権訴訟への当てこすりであることは言うまでもない。

 恒例となったStar Trekに関する質問が終わった時点で、Geeksが2000点対1000点でNerdsをリードしていた。しかし、MicrosoftがFATファイルシステムで特許権を主張しているのを知っていたNerdチームが得点をタイに持ち込んだ。

 アリソン氏は引っかけ問題も2つほど用意していた。1つは、「DOS、PowerPoint、SMBプロトコル、SQL Server、Internet Explorerのうち、Microsoftが最初から開発したものはどれか」というもの。どれもMicrosoftオリジナルではないというのが正解で、観客からはブーイングの声がわき起こった。

 Nerdsは、ラリー・エリソン氏がLinux Worldでスピーチを行っている間、同氏の特製クッキーの見張り役の人数(2人)を言い当てたことで、5000点対3750点でGeeksをリードした。

 さらにNerdsは、The Time Machineに関する質問に正解してリードを維持した。質問の内容は、「この映画に登場するタイムトラベラーが世界の最後に見たのは、冷たいものか熱いものか?」というもの。Geeksは「熱いもの」と答えたが、これは不正解。「トラベラーが見たのは雪だった。人類は死に絶え、後に残ったのはゴキブリとトロール(地下に住む巨人)とSCOの弁護士だけだった」とアリソン氏は言った。

接戦で終わる

 第2ラウンドはやや短かったものの、質問は難しく、獲得する得点も高くなった。

 「攻撃者がWEPセキュリティを破るために捕捉しなければならないパケットの数は?」とアリソン氏は尋ねた。両チームとも、この質問にはお手上げだった。正解は400万パケット。

 次の質問ではGeeksが得点を獲得した。これは、企業名に対応した社是を言い当てるという課題で、Googleは「Don't be evil」(邪悪にはならない)、Ethereal(Network Snifferのメーカー)は「Sniffing the glue that holds the Internet together」(インターネットを結び付ける接着剤のにおいをかぐ)、Microsoftは「A computer on every desk and in every home」(あらゆる机、あらゆる家庭にコンピュータを)というのが正解。

 最後の課題はやはりLinuxに関するものだった。オープンソースシステムとプロプライエタリシステムを含めて、LinuxあるいはBSD用の非ネットワークファイルシステムを挙げよというもの。両チームに1分間の時間が与えられ、思いつく限り答えを紙に書くよう求められた。

 競技者たちが頭をかきながら奮闘する様子に、「この興奮に耐えられる人はいるでしょうか」とアリソン氏。

 全部で30種類のファイルシステムのうち、Nerdsは14種類、Geeksは13種類を言い当てた。アリソン氏は集計に苦労しながらも、「結果はどうあれ、両チームはGolden Penguin Bowlの知識比べ競争で驚くべき接戦を演じた」とコメントした。

 結局、1万9000点対1万8750点という僅差でNerdsがGeeksに競り勝った。審判団からNerdsチームにトロフィーが手渡され、同チームは来年までこの勝利を自慢する権利を手に入れた。

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