2004年オープンソース・ビジネス・アワードが発表、受賞者は三者三様

OSCARアライアンスは、「2004年オープンソース・ビジネス・アワード」の受賞者を発表した。「長崎県」、「モンテローザ」、「ペンギンファクトリー」が受賞している。

» 2004年12月14日 20時37分 公開
[西尾泰三,ITmedia]

 特定非営利活動法人OSCARアライアンスは12月14日、「2004年オープンソース・ビジネス・アワード」の受賞者を発表した。同アワードは、ビジネスにおけるオープンソース活用の推進において、その年に最も活躍した企業/団体/個人を表彰するもので、OSCARアライアンスの定例行事として今年で3回目を迎えた。

 今回ノミネートされたのは全9件。その中から今回受賞したのは、11月にメインフレームを8年間でLinuxに移行する計画を発表した「長崎県」「モンテローザ」「ペンギンファクトリー」の3件だった。

仲西氏 受賞記念のトロフィーを手にする長崎県の仲西啓氏

それぞれの受賞理由

  • 長崎県

 オープンソース推進の動きは、経済産業省、総務省などが進めてはいるが、地方自治体においてはそれほど簡単な話ではないようだ。特に、比較的大規模なシステム開発の案件だと、大手ベンダーを選んでしまう向きも多いのが現実といえる。このことは地域に根ざした中小ベンダーの活性化を妨げる一因となる。この事態を憂慮する長崎県では、地域の中小ベンダーをシステム開発に参加させるため、職員による詳細な設計書の作成とシステムの小分け発注を実施するという方法を採った。

 その結果、平成14年から15年におけるシステム開発案件の約48%を地元のIT企業が受注することとなった。さらに、平成16年はこの割合が約60%となっている。

 こうした情報システム構築の基盤技術にはオープンソースを採用しており、現在開発中の電子申請・内部庶務ジムなどのシステムについては、完成後にソースコードを公開する計画となっている。

 授賞式に参加した長崎県総務課情報政策課企画監の仲西啓氏は、「それなりに大変なこともあるが、その都度枠組みを変更するなどしてやってきた」とオープンソース採用について述懐する。品質、コスト、納期といったいわゆるQCDのほかに地場産業の活性化も考えなければならない地方自治体がオープンソース導入を決断した貴重な事例といえる。

  • モンテローザ

 モンテローザという社名を知らない人も、モンテローザが手がける「白木屋」「魚民」「笑笑」といった店はご存じだろう。同社の受賞理由は、同社が構築した宴会予約システムにある。

 居酒屋業界では、予約は大きな意味を持つ。事前に人員配置や料理の仕込みなどができることから、顧客満足度を上げることが可能となるし、売上予測も立てやすくなるからだ。このため同社でも、宴会予約センターで全国の店舗の宴会予約を電話で受け付けていた。しかし競合他社もインターネット予約システムを導入し始めたことで、同社でもその導入を迫られていた。ここで同社が目を付けたのは「GARAGARDOA」(ガラガラドア)だった。

 GARAGARDOAは、ニユートーキヨーがオープンソースとして公開した外食産業向け座席予約管理システムで、OSにLinux、WebサーバにApache、開発言語にPHP、データベースにPostgreSQLとすべてのコンポーネントにオープンソースを採用している。

 モンテローザはこのWebアプリケーションのコアを活用、近隣の店舗の予約状況も動的に表示させるなどユーザビリティを高めた改変を行い、同社ホームページ上で公開する予約システムを構築した。開発は当初予算の6割程度で行えたという。

 実際は予約センターも併用しているとはいえ、稼働後6カ月で1万件を越える予約を受け付け、成約率も80%という高い実績を上げている。

  • ペンギンファクトリー

 ペンギンファクトリーは、自社のグループウェアである「ペンギンオフィス2」をオープンソース化したことが大きい。同社代表取締役社長の折笠僚洋氏は受賞時のコメントとして「それまでオープンソースソフトウェアを使ってきたが、いざ自分たちが開発したものをオープンソースで公開、となると怖い部分もあった。しかし、オープンソースにしたことで、OEMの話をいただいたり、学生などにも名前を知られるなど、対面営業では得られない効果があったのは事実」と話している。


 今回の受賞は、自治体、ユーザー企業、業務アプリケーションパッケージベンダーという三者三様で、それぞれの受賞理由も、オープンソースを活用した地域活性化、ビジネスへの活用・投資削減、オープンソースビジネスへの取り組み、とそれぞれ異なるものとなった。

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