セキュリティ強化のNetscape 8、公開βが2月中旬に登場

Netscape 8は有害なサイトや信頼できるサイトのリストに基づいて、自動的にブラウザのセキュリティ設定を変更する。2月17日には公開β版がリリースされる予定だ。(IDG)

» 2005年02月02日 15時51分 公開
[IDG Japan]
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 米America Online(AOL)は2月17日、Web閲覧中のユーザーを詐欺や有害なコードから守ることを目指した新しい「Netscape」ブラウザの最初の公開テスト版をリリースする計画だ。

 AOLはこの新版により、圧倒的な市場シェアを持つが多数のセキュリティ脆弱性が発見されてきたMicrosoftのWebブラウザ「Internet Explorer(IE)」に対抗する。また、昨年11月にリリースされ、累計ダウンロード件数が2200万近くに上るオープンソースWebブラウザ「Firefox」の人気に便乗しようとしている。

 新しいNetscape 8ブラウザは既知の有害なWebサイトのリストを使って、セキュリティ設定を自動的に調整してユーザー保護を図る。WebサイトのブラックリストはユーザーのPCに保存され、頻繁に更新される。AOLは現在、こうしたサイト情報を供給するためにさまざまなセキュリティ企業と交渉中だと、AOLに近い関係者は話している。

 Netscape 8では、ユーザーはWebを閲覧中に、フィッシング詐欺に関与したり、スパイウェアなど有害なコードを配布していることが分かっているサイトにアクセスすると、ブラウザのタブに赤いチェックマークが表示されて注意を促される。JavaScriptやクッキー、ActiveXなどのブラウザ技術は無効に設定される。

 フィッシング詐欺は広くはびこっているオンライン攻撃の手口で、一般にスパムメールと正規の電子商取引サイトに見せかけたWebページを組み合わせ、ユーザーの名前やパスワード、クレジットカード番号などの機密情報を盗み出す。

 またNetscape 8は、信頼できることが分かっている銀行やオンラインサービス、オンラインストアなどのサイトを緑のチェックマークで区別して示す。こうしたサイトはデフォルトでIEのレンダリングエンジンを用いて表示され、表示の互換性が最も高まるようにほとんどのブラウザ技術が有効に設定される。情報筋によると、信頼できるサイトのリストはTrusteなどの組織から提供される。

 未知のサイトは黄色のチェックマークで示される。ユーザーはブラウザのタブから簡単にアクセスできるメニューを用いてサイトごとに設定を変更できる。

 Netscape 8はFirefoxをベースとしているが、IEのブラウザエンジンもサポートする(12月1日の記事参照)。AOLは11月末に一部のテスター向けにNetscape 8のプレビュー版をリリースしている。同ブラウザはIEのエンジンは搭載しないが、Windowsに含まれる同エンジンを使用する。このため、Netscape 8はWindowsコンピュータ上でしか動作しない。

 IEはWindowsの一部であり、大部分のWebユーザーに利用されている。多くのWebサイトはIEに合わせて設計されており、Firefoxに搭載のGeckoエンジンなど、ほかのエンジンを採用したブラウザでは適切に利用できない場合がある。例えば、映画サイトのMovielink.comや税金関連サイトのHRBlock.comは、Firefoxでは十分に活用できない。

 「IEで大きな不満が出ている点の1つはセキュリティだ」と匿名希望のNetscape 8開発者は語る。「われわれはそうした不満はもっともだと思うが、IEの技術の多くは有意義に利用することもできると考えている」

 Netscape 8のβ版ではセキュリティ機能に加え、Firefoxにも搭載されているRSS(Really Simple Syndication)フィードの強力なサポートも提供され、ユーザーはさまざまなホームページが別々のブラウザタブで表示されるように設定できる。

 IEのセキュリティに関する悪評を利用して差別化を図るブラウザは、NetscapeやFirefoxだけではない。例えば英Deepnet Technologiesは、IEをベースにフィッシング詐欺対策などの機能を付加した無料のブラウザを提供している。Deepnetのブラウザは提携先やフィッシング対策に取り組むWebサイトから既知のフィッシングサイトの情報を集めるだけでなく、Netscape 8にないフィッシング報告機能も備えている。

 NetscapeはWebの黎明期には最も人気のあるブラウザだった。AOLは、1990年代半ばにMicrosoftがIEを投入したことで影が薄くなったNetscapeに新たな活路を開こうとしている。AOLの計画に詳しい筋によると、Netscape 8の正式版は4〜6月期にリリースが予定されており、同社は利用促進に向けたマーケティングを実施するという。

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