月刊「OpenOffice.orgコミュニティ通信」――2月号

OpenOffice.org 2.0のベータテストが間近。そして今回は、Mac OS X版の開発状況について解説していく。

» 2005年02月18日 19時41分 公開
[可知 豊,ITmedia]

 毎日が寒いこのごろ、いちだんと春が待ち遠しいくなりました。そして、それ以上にOpenOffice.orgで待ち遠しいのが、2.0の登場です。もうすぐベータテストも始まります。

 それでは、OpenOffice.org関係のニュースを紹介しましょう。今号では、Mac OS X版の開発状況についても解説します。

オランダ・ハーレム市、2000台分をOpenOffice.orgに移行

 この発表は「OpenOffice.org Newsletter - Volume 02 - Issue 6 - 12/2004」に掲載されていたニュースです。オランダのハーレム市(Haarlem)は、2000台分のMicrosoft OfficeをOpenOffice.orgに移行したところ、450,000ユーロ(6300万円)の節約を実現と表明。この乗り換えの決め手となったのは、価格以上にOpenOffice.orgの機能充実ぶりだと言われています。また、VBAマクロプログラムの互換性問題は、庁内のWebベース文書作成システムで克服したそうです。

 これによりオランダ政府はMicrosoftとのアップグレード独占交渉を中止することになり、この場合、対象となるワークステーションとサーバーは26万台にも上ります。

1月14日、フランス警察でOpenOffice.orgを正式採用

 フランス警察は、OpenOffice.orgフランス語プロジェクトのメーリングリストでフランス警察の全部署がOpenOffice.orgを採用すると公式発表しました。

 3月頭には35000ユーザー、今夏頭には80000ユーザー、今年中にフランス警察の全警察官と職員がOpenOffice.orgユーザーになるそうです。なお、フランスでは、すでに財務省と内務省がOpenOffice.orgを採用しています(関連リンクニュース)。

1月17日、OpenOffice.org1.1.4日本語版をリリース

 1.1.x系の新版である1.1.4の日本語版リリースがアナウンスされました。

 今回のリリースは、1.1.3からのバグフィックスです。81件の不具合を修正しており、安定度を高めたバージョンとなります。日本語版としては、WindowsとLinux(x86)、Soralis(x86、SPARC)版がリリースされています。独自ビルドとしては、中田真秀氏によるFreeBSD版もリリースされており、OpenOffice.org日本ユーザー会の有志によりQA(品質確認)テストが行われました(関連リンク:ダウンロード)。参加してくれた皆さん、ご苦労様でした。

1月18日、2.0リリース予定

 Release Engineering teamのMartin Hollmichel氏は、Release向けMLに、2.0のリリース予定について投稿しました。

 現在、優先順位P2に分類される不具合が38件あり、これがベータテストを始める障害になっているそうです。そこで、彼は次のスケジュールを提案しています。

  • 1月27日までに、ベータ版に関係あるすべてのIssueを集める。
  • 2月中旬までに、ベータテストを開始する。
  • 3月末までに、ベータ版のフィードバックを集める。
  • 4月、2.0の最終リリース。

 これは公式のスケジュールではありませんが、現在リリースされているアルファ版の完成度により、本格的にベータテストが動き出すでしょう。

1月28日、アルファ版1.9.m74リリース

 開発が進むOpenOffice.org 2.0ですが、さらに新しいアルファ版が登場しています。各プラットフォームの対応状況を紹介しましょう。

 公式ビルドとしては、1.9.m74がリリースされています。これは、Windows版とLinux版があります。日本語版を使うには、ランゲージパックを追加インストールします(ダウンロードページ、英語)。関連リンクのm74リリースノートや、ランゲージパックについてが参考になります。

 Curvirgo氏による独自ビルドとしては、1.9.m72のWindows版Linux版がアップされています。これには、rtf関連およびWord 6.0ファイル読み込みなどの日本語対応が盛り込まれています。

 また、FreeBSD版では中田真秀氏による独自ビルド1.9.m73とランゲージパックが公開されています。

 Mac OS X(X11)向けの英語版は、1.9.m71s1の開発が進んでおり、現在スクリーンショットが公開されています。日本語版は登場していませんが、フランス語プロジェクトのEric Bachard氏がm71s1の英語版とフランス語版のビルドに成功しており、その手順を公開しています。

スプラッシュスクリーン投票開始

 OpenOffice.org 2.0のリリースに向けて、スプラッシュスクリーンを決める投票が始まっています。

 スプラッシュスクリーンとは、アプリケーションの起動時に表示される画像で、ソフト名などが記載されています。OpenOffice.org1.1では、カモメと波の図案が描かれているので、読者にも馴染みでしょう。新たなスプラッシュスクリーンを決めるため、作品を募集したところ、世界中から103人の作者により340の作品が寄せられたとのことです(関連リンク)。その中から11の候補が厳選されました。候補と投票方法は、下記に掲載してあります。投票には、OpenOffice.orgコミュニティへの登録が必要になります

 1月、いったん投票が始まりましたが、候補にサンのロゴ有無があったため、その投票はキャンセルされました。すでに投票した人も、あらためて投票してください。投票は、2月15日の9時に締め切られます。ここで選ばれた画像は、OpenOffice.orgを起動した際、世界中のユーザーのデスクトップに表示されることになります。

Mac OS X版の開発状況

 先日、OpenOffice.orgコミュニティサイトのMac版開発スケジュールに関するページが更新されました。これまで、Mac OS XのAquaネイティブ対応版は2.0のリリース以降、2006年頃に登場すると言われていましたが、このページの更新で新たな方向が見えてきたようです。

  • Mac OS X版の現状

 現在、Mac OS XでOpenOffice.orgを利用するには、2つの選択肢があります。ひとつは、X Window Systemで動作するものを利用する方法。このMac OS X(X11)版は、WindowsやLinux版と同じペースで開発が進んでおり、OpenOffice.orgから1.1.x英語版がリリースされています。

 日本語版は、Ozk氏が独自ビルドを提供しています。OpenOffice.orgの機能としては遜色がありませんが、Aqua上では動作せず、別途X Window Systemをインストールする必要があるなど、比較的敷居の高いモノになっています(さらに、日本語変換とフォント対応にも課題があります)。

 もうひとつの選択肢として、X Windows SystemをJava同等のプログラムに置き換えた「NeoOffice/J」があります。こちらはAqua上で動作し、ほかのMac OS Xアプリケーションと同様にメニューバーが画面上部に表示されます。また、ことえりやATOKといったOS Xネイティブの日本語IMEも動作し、ライセンスはGPLとなっています。

 1月号のコミュニティ通信で紹介し忘れましたが、2004年12月には、X11版1.1.3のソースコードに基づいた1.1betaが公開されています。これは、日本語版を含む12カ国語版が共通バイナリーになっています。日本語ヘルプは、別途インストールします。パッチも頻繁に更新されています。

起動速度の比較を見ると

 「X11よりもJava版の方が、速度が遅い気がする」というコメントがあり、きもとまさや氏が2つの起動速度を測定しました。

 測定環境は、iMac G4(Mac OS X 10.3.7/700MHz PowerPC G4/768MB SDRAM)であり、ログイン直後はほかに何も動作させていない状態です。

表■X11、OOo、NeoOffice/Jの起動速度比較
対   象 動    作 時  間
X11のみ 起動 一瞬で起動
  標準のXtermを起動 8秒程度
X11+OpenOffice.org (Kevin氏BuildのTechPreviewで1.1.1相当)
初回起動 起動〜スプラッシュ表示 24秒
  起動〜メインウィンドウを完全に表示 31秒
2回目以降(5回で平均) 起動〜スプラッシュ表示 9.34秒
  起動〜メインウィンドウを完全に表示 11.28秒
NoeOffice/J 1.1 Beta(Patch 5) 
初回起動 起動〜スプラッシュ表示 24秒
  起動〜メインウィンドウを完全に表示 43秒
2回目以降(5回で平均) 起動〜スプラッシュ表示 9.42秒
  起動〜メインウィンドウを完全に表示 16.7秒

※ X11+OpenOffice.orgでは、初回起動時に個別インストールと同等の処理。

 上表から分かることは、意外にもほとんど差が無いということでしょう。もちろん、ほかのアプリケーションを併用しながらであれば、起動時間は大きく変わってくるでしょう。また、JavaVMが起動済みか、クイック起動を使っているかでも違ってくると思います。

 NeoOffice/Jの完成度が高まっているため、今後はX11版よりもこちらの人気が高くなるかも知れません。また、OpenOffice.orgやMozillaのようなオープンソースでクロスプラットフォームのデスクトップアプリケーションが普及することで、Windowsユーザーが代替パソコンを探すとき、Linuxだけでなく、Mac OS Xが選ばれる可能性もあるでしょう(どうせお金を払うなら、かっこいいパソコンのほうがいいじゃないですか)。NeoOffice/Jの技術は、ほかのLinux向けオープンソースソフトウェアの移植にも影響を与えるかもしれませんね。

Mac OS X版の開発方針

 これまでMac OS XのAquaネイティブ対応版は、2.0のリリース以降、2006年ごろに登場するといわれていました。これは、ITmediaに掲載された記事で述べられていたものです(関連ニュース)。

 今回、開発スケジュールページが1年半ぶりに更新されて、異なる方向性が述べられています(関連リンク一部翻訳のもの)。

 OpenOffice.orgコミュニティとしては、これまでMac OS X(X11)版の開発に注力してきており、Aquaネイティブ対応の開発は実際には行っていませんでした。そちらの開発は、JavaとCarbonを利用してNeoOffice/Jが行ってきました。

 OpenOffice.orgコミュニティは、これからも、Mac OS X(X11)版の開発に注力していきます。では、ネイティブのAqua版はどうなるかというと、近い将来、基本的にNeoOffice.orgプロジェクトが行うことになります。実際、NeoOfficeのWikiページにNeoOffice/Cの説明があります。以前は、NeoOfficeプロジェクトのWebサイトに「NeoOffice」という名前で説明がありましたが、わかりにくいと言うことで現在は「NeoOffice/C」と呼ばれています。Cは、Cocoa対応を表しています(関連リンク)。

 Mac OS X版の開発では、まずOpenOffice.org2.0のX11版が開発されて、それから、そのソースコードを利用して、NeoOffice/J2.0が登場するでしょう。そのため、両方の品質を上げることが重要です。

 バグを見つけたらフィードバックしてください。周りに使えなくて困っている人がいたら手助けしてください。腕に覚えのある人は、ぜひ、Mac OS X(X11)版とNeoOffice/Jの開発にも参加してください。

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