Windowsの攻勢とデスクトップLinux普及への道

Linuxは取っ付きにくいかもしれない、しかしそれを補って余りある価格面での利点がある。そうした言い古された言葉を改めて考える必要がありそうだ。

» 2005年03月01日 21時11分 公開
[Jay-Lyman,japan.linux.com]
SourceForge.JP Magazine

 Linuxは取っ付きにくいし、アプリケーションもなければサポートもないと言われ続けてきた。そうした言い古された非難に対して、Linuxには、誰にも異論のない利点が一つある。価格である。しかし、Linuxデスクトップの持つその利点も、雲行きが怪しくなってきたようだ。

 マイクロソフトは価格を大幅に割り引いて、市場がLinuxに流れるのを阻止しようとしているらしいのだ。長年にわたりソフトウェア業界を見てきたAmy Wohlが、サンフランシスコで最近開催されたOSDL Enterprise Linux SummitでLinuxデスクトップの現状を報告した。

 Wohlは世界におけるLinuxの概況をまず説明し、コンピュータがあまり普及していない開発途上国が、Linuxデスクトップにとっての沃野であることを示した。その上で、ミュンヘンの事例を引き合いに出した。同市がオープンソースの採用に傾いていると見るや、マイクロソフトは同市に極めて魅力的な提案をしたという件である。同市にとって9億5000万ユーロの節減につながると言われたが、この数字は同社が云々したものではなく、同社の幹部は主要ソフトウェアの取引はすべて交渉可能であることを示唆しただけだとWohlは言う。ともあれ、ミュンヘンは、最終的に、WindowsではなくLinuxを選んだ。

 地方自治体も企業もLinuxへの乗り換えをちらつかせてマイクロソフトとの交渉に臨んでいることは周知の事実だ。これに対して、マイクロソフトは、同社が握っているデスクトップ市場を維持することを目的に昨年Windows XP Starterプログラムを発表したが、さらにこれを超える対策を打ち出す可能性がある。Wohlは、このように懸念している。

 オープンソース陣営の人々を前に、Wohlは述べた。「マイクロソフトは、開発途上の数か国にStarter Editionの導入を持ちかけています。他の選択肢ではなく同社の製品を選んで貰うにはどうすべきか、同社はそれを探るための実験をしているのだということです。ここで、他の選択肢というのは私たちのこと。つまり、Starter Editionに効果がなければ、Linuxに対抗して、さらに競争力のある対策を講ずる可能性があるということなのです。これからも、同じことが繰り返されるでしょう」

政府が変化を促す

 米国を含む世界中の政府は経費節減を目指しているが、この動きはLinuxデスクトップにとって有利であるとWohlは述べた。さらに、デスクトップより単純で安価な携帯機器についても、アフリカ諸国や中国などの他の開発途上国で同じ状況にあり、ここではLinuxが先行していると言う。

 そして、北米Windows市場の動きは鈍いだろうが、世界には60億の人間がおり、Windowsに全くしがらみのない人々は十分に多いとWohlは指摘する。

 さらに、次の点を指摘した。教育分野はテクノロジを先行して導入する傾向があり、大学はデスクトップでのオープンソース・オペレーティング・システムの利用を促進してきた。また、ビジネス分野での導入も、一般に思われているより多い可能性がある。チップの供給元の話では、ウォルマートのLinspire搭載コンピュータに対する注文は、ほとんどが複数台だということである。

障壁と予測

 これまで言われてきたLinuxデスクトップの普及を阻む障壁の一部は消失した。親しみやすいソフトウェアが登場し、サポートも丁寧になり、営業上の脅し文句もなくなった。したがって、デスクトップLinuxの普及に励み、そのソフトウェアの価値を広く伝えるよう努めるべきである。Wohlは、このようにオープンソース陣営を促した。

「そのための雰囲気や流れを作り出す必要があります。それが普及への弾みとなるのです。私たちは、そのきっかけを示さなければなりません。マーケティングです。マーケティングをさらに改善する必要があります」

 Wohlは予測も披露した。それによれば、数年以内にLinuxがデスクトップ市場の25〜30%を獲得する地域が現れ、米国では、デスクトップLinuxが「強力な競争相手」となり、3年以内にOS市場の10%を占めるだろうという。Wohlは、現時点での米国におけるLinuxデスクトップの市場占有率を3〜3.5%を見積もったが、HPのBdale Garbeeが約5%だと指摘すると、喜んでその見積もりを受け入れた。

 さらに、Linuxはサーバー分野では地歩を固めているとみられているが、そのLinuxサーバーとLinuxデスクトップとの境界が曖昧になるだろうとも予測し、「キラー・アプリ」理論にも言及した。それはデスクトップにおけるアップルの治世の終わり――今では、デスクトップMacよりLinuxマシンの方が多い――を宣告するものであり、魅力溢れる同種のソフトウェアがマイクロソフトを追いやるだろうと言う。

「人々の変化を望むなら、人々が喜んで現状を変えるようなものを提供する必要があるのです」

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