基幹システムにLinuxを――ミラクルの佐藤社長

ミラクル・リナックスは、企業によるLinux採用を推進するためのイベントとして、「MIRACLE Technology Conference」を開催した

» 2005年03月04日 21時53分 公開
[怒賀新也,ITmedia]

 ミラクル・リナックスは3月2日に、企業によるLinux採用を推進するためのイベントとして、「MIRACLE Technology Conference」を都内で開催した。また、中国のレッドフラッグ(紅旗)、韓国のハーンソフトとともに、Asianuxの最新版「Asianux 2.0」を7月末にリリースすることも併せて明らかにしている。Asianux 2.0では、最新カーネルである2.6を採用し、政府や官公庁、通信キャリアなどへの導入を目指し、RAS(信頼性、可用性、保守性)を強化しているという。

ミッションクリティカルな分野にLinuxを導入したいと話す佐藤氏。

 同社の佐藤武社長は基調講演で、「アジアナックスプロジェクトでアジア標準のLinuxを開発し、その後は世界を目指す」と話す。先日のOracle 10g Worldでの日本オラクルの新宅正明社長によるLinuxユーザー増加のコメントを引用しながら、「Linuxがミッションクリティカルな分野で着実に力をつけてきている」とLinux市場の行方に手ごたえを感じていることをアピールした。

 アジアナックスプロジェクトは、2003年12月にRedFlagとミラクルがAsianux1.0を開発したところからスタートした。2004年6月には、ミラクルが「MIRACLE LINUX 3.0 - Asianux Inside」、Red Flagは「Red Flag DC/AS 4.1- Asianux Inside」をそれぞれリリースしている。また、同年7月にはOracleの「Unbreakable Linux」に認定された。10月には韓国のハーンソフトがAsianux参加を表明している。

 対応プラットフォームも、2004年6月のIA32対応版、9月には64ビットプロセッサであるItanium 2対応版、さらに、今年に入り2月には、インテルとAMDのx86系64ビットに対応したバージョンをリリースするなど、確かな歩みを続けている。同プロジェクトは、北東アジアOSS推進フォーラムも日中韓を横串する形で参画しており、日本に限ると、Japan OSS Forum、経済産業省、JISA(社団法人情報サービス産業協会)、IPA(独立行政法人情報処理推進機構)などもAsianuxをサポートする体制になっている。

 Asianux 2.0では、x86、x86-64、OpenPowerのアーキテクチャに対応し、さらに、SP1ではItanium Professor Family(IPF)もサポートする。また、リリース後、3カ月以内にミラクルは、「MIRACLE LINUX V4.0 -Asianux Inside」を出荷する予定。RASのほか、UTF8、EUC、SJIS、SB18030への対応など、日本語、中国語、韓国語化が強化されるという。

サポート体制の拡充

 さらに、Linux導入におけるネックの1つとも言われるサポート体制を大幅に強化する点も注目される。サポート費用は60万円。

 エンタープライズサポートでは、ダンプ解析や障害レポート報告、緊急パッチの提供を行う。また、サポート期間を7年間に延長、休日を含めた24時間対応を実現する。さらに、サポート契約の締結の有無に関わらず、すべてのユーザー企業に対して修正モジュールを無償で提供することも明らかにしている。「ライセンスを購入すれば修正モジュールを無償提供する。これが決め手に導入を決めてくれた顧客企業も多い」と佐藤氏は話す。

 Linuxを実際に運用している企業からは、「システム周りの管理をすべて自分でやることを考えると、Windowsの方が効率がいい」(関連記事)といった声もあり、サポート体制の強化はLinuxへの信頼性を高める上で不可欠の取り組みと言っていい。

 また、Linuxベースでシステムを構成する場合のもう1つの問題点として、デバイスの互換性も挙げられる。つまり、OS上で、稼動しないハードウェアやソフトウェアが見つかることがしばしばあり、「互換性をだれが保証するのか」という問題が常について回るわけだ。この点も、現状でWindowsに軍配を上げる際の要因の1つとなる。

 一方、Asianux 2.0では、ここでいう「互換性」とは若干異なるが、32ビットアプリケーションがそのまま64ビット環境で稼動することをサポートしている。「保証ではないものの、これまではあまりなかったもの」と佐藤氏はアピールした。

 Asianuxは、開発体制がしっかりしていることにも注目できる。IBM、EMC、Hewllet Packerd、Stratus、インテル、AMD、Oracle、NEC、東芝、Unisys、日立製作所など、大手ベンダーが製品の開発をサポートしている。

 なお、同社は、2月28日に出荷が開始されたMIRACLE LINUX V4.0 -Asianux Inside for x86-64を、半額で提供するキャンペーンを3月末まで行うとしている。

この日は、レッドフラッグのChris Zhao氏(左)、ハーンソフトのJon Jin Baek氏(中)も登壇し、Asianux成功に向けて努力すると話した。

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