中国とインドが協力すればグローバルITをリードできる――温首相

中国の温家宝首相が、インドのIT産業の中心地であるバンガロールを訪問した。ビジネスチャンス拡大をにらみ、両国のIT産業は接近しつつある。

» 2005年04月12日 23時15分 公開
[IDG Japan]
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 インドのソフトウェア技術と中国のハードウェア技術を組み合わせれば、両国はIT分野で世界の指導的地位に立つことができる――中国の温家宝首相は4月10日、インドのバンガロールでこう語った。

 「それはIT産業におけるアジアの世紀が始まることを意味する」と温首相は語った。

 4日間の日程でインドを公式訪問している温首相は4月9日、最初の訪問地としてインドのIT産業の中心地であるバンガロールを訪れ、同国のソフトウェア/サービスアウトソーシング企業、Tata Consultancy Services(TCS)の施設、ならびに中国深川を本社とするネットワーキング機器ベンダー、Huawei Technologiesのインド研究開発(R&D)センターを見学した。

 隣国同士の中国とインドのIT産業は、最近までそれぞれ独自に発展してきた。その背景には、政治的基盤の違いや両国間の国境紛争がある。しかしここ数年、中国の政治的リーダーシップおよび両国の市場機会の拡大を背景として、両国のIT産業は接近しつつある。

 ムンバイに本社を置くTCSに加え、バンガロールを本拠とするWiproやInfosys Technologiesなどインドの数社のソフトウェア/サービス企業が、中国にソフトウェア開発拠点を設立した。

 バンガロールにあるHuaweiのR&Dセンターは2000年に設立された。中国のIT企業がこのような施設をインドで立ち上げたのは同センターが初めて。Huawei Technologies Indiaのギルバート・ジョセフ総務部長によると、同センターはHuaweiにとって国外で最大のR&Dセンターであり、800人を超える技術者を雇用している。Huaweiでは1〜2年後に、製造施設もインドに建設する計画だという。

 深川に本社を置く通信機器ベンダーのZTEは3月、インドに製造施設を建設したと発表した。

 中国がインドのソフトウェア/サービス企業を利用することによって、同地域で第2のソフトウェア/サービス大国になることを狙っているのでないかというインド側の不安も、次第に薄らぎつつある。

 TCSのスブラマニアン・ラマドライCEO兼業務執行ディレクターは、「中国を競争相手としてのみ見るのではなく、われわれにとって大きな市場であると見る必要がある」と話す。

 TCSは現在、中国で200人の従業員を雇用している。ラマドライ氏によると、同社では、中国を含むアジア太平洋地域の顧客へのサービスならびに中国市場開拓のためのリソースプールとして中国での事業を活用する方針だという。「中国の銀行、金融サービスおよび保険業界は大きな変革期にあり、これはインドのITサービス企業にとって大きなビジネスチャンスだ」と同氏は付け加える。

 ラマドライ氏は、デリーに本部を置くインドの業界団体NASSCOM(National Association of Software and Service Companies)の会長も務める。

 ラマドライ氏によると、インドのIT企業が中国市場にアクセスする見返りとして、中国に投資し、中国内の人材を使って中国からグローバル市場にアクセスすることを中国は望んでいるという。

 「彼らはソフトウェア産業を築くというビジョンを持っている」(同氏)

 温首相はバンガロールの訪問中、インド宇宙研究機関および同国の主要教育機関であるインド科学大学を訪れた。今週行われるインドのマンモハン・シン首相との会談で温首相は、両国間の国境問題の解決策を探るとともに、両国間の自由貿易協定を提案するものとみられる。

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