コミュニケーションに方法論を持ち込もう進化する設計手法(1/3 ページ)

SEは顧客から要件を聞き出し、設計書を書かなくてはならない。そこで要求されるのはコミュニケーション力だ。そして、コミュニケーション力に頼る設計の限界を打破するべく、Openthologyという方法論も登場した。(特集:顧客満足度ナンバーワンSEの条件)

» 2005年04月25日 00時00分 公開
[吉田育代,ITmedia]

 一般に、SE(システムエンジニア)は技術力だけが優れていても一人前ではないとされている。

 たとえば、あるエンジニアは、「正しくないシステムを正しく作ってしまった」という経験が何度もあるという。つまり、バグはない、データの連携もスムーズ、パフォーマンスも正常だ、でも、本来のビジネスプロセスには馴染まず、結果としてまったく利用されなかった。というのも、彼が顧客企業との対話で固めたはずの要件定義がまるで的外れだったのである。「そのときの悲しさは言葉では表現できない」と彼は苦笑いする。

 こうした文脈の中で、望まれる能力の筆頭として登場するのがコミュニケーション能力だ。顧客とうまくコミュニケーションできないようでは、意思の疎通がはかれず、要求されたシステムを正しく開発することができないという。

 では、具体的にコミュニケーション能力とは何だろう。まず、相手にきちんと伝わるように話を理路整然と組み立てて上手に話す力がある。また、必ずしもシステムの話だけではなく、業界動向や話題の事件、スポーツや趣味の話ができるなど、相手の気をそらさないような話題の広さもあった方がいいかもしれない。相手の話に素直に耳を傾け、意図や本音を引き出す力は必須だろう。さらに、相手からの連絡にすばやく反応したり、こまめに相手とコンタクトを取って関係を良好に保つ努力も必要だ。

 これらの能力はすべて身につけるに越したことはない。しかし、どうなればその人にコミュニケーション能力が「ある」と、あるいは「ついた」と判定するのか。明確な基準を持つのが難しい現状では、ひとえに個人の自助努力に頼るしかなく、それは甚だ心もとない。

 前述のように、SEにはシステムの要求分析という重要な仕事がある。RFP(request for proposal:提案依頼書)は提出されるものの、たいていの場合、開発するシステムの完成イメージは、それを必要としているユーザーの頭の中でもまだ曖昧模糊としている。生半可な理解ではニーズを満たすシステムは作れず、大幅な手戻りが発生する危険性があるため、「あの点はどうですか」「この点はどうしますか」と、SEは必死でヒヤリングすることになる。

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