“Tiger”をもってしても、Appleがエンタープライズベンダーになれない「理由」

Tigerは素晴らしいOSだ。というよりも、すぐに素晴らしいOSになるだろう。だが、もしAppleがエンタープライズベンダーとして認められたいのであれば、今のような、顧客に対する不意打ち作戦は差し控え、β版によるトライアルシステムを改善する必要がある。

» 2005年05月10日 14時11分 公開
[David Coursey,eWEEK]
eWEEK

 Appleの新しいMac OS X 10.4「Tiger」は素晴らしいOSだ。同社はまた、優れたハードウェアプラットフォームも提供している。だが私は、Tigerのリリースに際しての同社のやり方や、アプリケーションの不備や相互運用性をめぐる問題といったさまざまなトラブルを見るにつけ、同社が本気でエンタープライズベンダーを目指しているのか疑問に感じざるを得ない。

 以下は、Tigerに関して最近明らかになった問題点の一部だ。

  • Macを使用しているエンタープライズ顧客は、Ciscoの仮想専用ネットワーク(VPN)にリモートシステムからアクセスできないことが明らかとなった。
  • AppleがTigerに新たに導入したローレベルのコードやバグのせいで、エンタープライズ管理者にとっては、ネットワーキングをめぐるさらに多くの問題が引き起こされている。
  • 一部の顧客からは、相互運用性のないユーティリティアプリケーションの通常のバッチや、SMBの接続性に関するトラブルが報告されている。

 TigerにWindowsネットワーキングとの問題があるのは別段、驚きではない。だが、何かと不都合の多い環境であえてMacを使い続けたいと考えているエンタープライズ管理者にとって、こうした小さな問題も積もり積もれば大きな頭痛の種となる。

 一部のアナリストやAppleの擁護派にとって、こうした考えは誇張にすぎない。彼らにしてみれば、新製品には問題が付き物で、問題があって当たり前なのだ。

 だが私はこれを、Appleがエンタープライズベンダーではないということ、また同社は常にエンタープライズ市場につま先を踏み入れつつも、エンタープライズベンダーとなることに実はそれほど執心しているわけではないことの表れだと考える。

 実際、少なくとも製品の設計と品質の点では、Appleはしっかりとエンタープライズ市場に足を踏み入れている。同社は非常に良質のエンタープライズサーバやSAN(ストレージエリアネットワーク)のほか、使い勝手と扱いやすさに優れたUNIXベースのOSを有している。

 Appleは単に、「真のエンタープライズベンダー」になるために必要なことを実行する準備が整っていないだけだ。

 例えば、真のエンタープライズベンダーであれば、自社製品に注目してもらいたいため、あそこまで秘密主義や意外性に頼ることはないだろう。また真のエンタープライズベンダーであれば、OS製品に関する製品ロードマップや大々的かつオープンなβプロセスをきちんと用意し、Tigerが現在Microsoftサーバとの間で抱えているような問題は避けられるようにするだろう。

 私が思うに、Appleは徹底した秘密主義の会社にもなれるし、エンタープライズ企業にもなれる。だが、同時に両方になることはできない。

 収益の面では、Appleにとってはコンシューマーベンダーであることに意味があり、秘密主義はそうした顧客をワクワクさせるのに役立っている。だが、これまでのところ私がTigerについて知り得たことは、既に何カ月も前からAppleのWebサイトに書かれていることだけだ。なぜAppleがもっと広範なβプログラムを実施できなかったのかは、同社最高経営責任者(CEO)のスティーブ・ジョブズ氏のみが知るところだ。

 公平を期すために言っておく。私はちょうどMac miniユーザー向けの書籍を書き終えたところだが、私がテストした限りでは、ほかのユーザーが苦情を述べているようなSMBプロトコルとの問題は起きなかった。また私はMicrosoft Small Business Serverを使っているが、この環境では前バージョンのPantherよりもTigerのほうがはるかに使いやすかった。

 Microsoft Exchangeのサポートは依然として、期待に沿うレベルには達していない。また、これまでExchangeとAppleのAddress Bookアプリケーションの間で提供されていた接続性はすべて解消されているもよう。VPNのサポートもあるが、実際にはネットワークの設定によってまちまちのようだ。

 だが市場シェアが小さく、エンタープライズ市場でのプレゼンスも低いがゆえに、Appleはもっとしっかりした公開テストを必要としているソフトをほとんど実害なくリリースできてしまう。これは、真のエンタープライズベンダーになるために必要なことをAppleが実行したがっていないことを示す、さらなる証拠だ。そして、顧客の側では皆そろって新製品に手を出さないのは、そうしたAppleの態度が原因なのだ。

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