コンシューマーセキュリティでライバルを追撃するMicrosoft

Microsoftの新しいウイルス対策サービスは、競合製品の改善と低価格化を促す効果がありそうだ。Symantecは競争を恐れていないと話しているが、この動きが同社にとって朗報でないのは明らかだ。

» 2005年05月17日 16時10分 公開
[Larry Seltzer,eWEEK]
eWEEK

 Microsoftの新しい会員方式のウイルス対策サービスは、競合製品の改善と低価格化を促す効果がありそうだ。

 周りから見れば危機的だと思えるような状況にあっても、Microsoftがのんびりと構えていることに、時として驚かされることがある。セキュリティ問題がその最たる例だ。Microsoftがウイルス対策ベンダーを買収して2年近く経過した今、同社はようやくそれで何をするかを決めたようだ。

 Microsoftが先週発表した「Windows OneCare」(コンシューマーのPCの健康を守るための、自動化されたオールインワン型サービス)は、単なるセキュリティスイートではない。長い間、様子を見ていたせいでウイルス問題が日常化したため、同社はありきたりのセキュリティスイートを提供するだけでは済まなくなったのだ。それで彼らは「次世代」方式に移行しようとしているのだ。

 Microsoftのサービスのウイルス対策機能は特に目新しいものではないと予想しているが、同社がスパイウェア対策プログラマーの主導の下でプロジェクトを進めれば、品質の高い製品が出てくる可能性もある。

 それよりも注目されるのが、パフォーマンス最適化やバックアップといった機能だ。Windowsにもバックアッププログラムが付属するが(筆者もそれを利用している)、一般向けとしては優れたソリューションではないのは明らかだ。これに対して、OneCareのバックアップ/リストア機能はCDやDVDドライブにも対応する。

 パフォーマンス最適化機能については、首をかしげざるを得ない。プレスリリースによると、このサービスは「ディスククリーンアップ、HDDのデフラグ、ファイルの修復といった定期メンテナンス作業を自動的に実行する」という。

 しかしよく考えてみると、既にWindowsはこういったタスクをすべて自動的に実行することができるのだ([スタート]メニューから[すべてのプログラム]をクリックし、[アクセサリ] - [システムツール] を選択し、さらに[ディスククリーンアップ] あるいは[ディスクデフラグ]を選択する)。

 恐らく、こういった古いツールはひどい代物なのだ。だとすれば、OneCareは、Microsoftがそれを改良するつもりがないということを認めているのにほかならない。これにはがっかりした。

 それと価格の問題がある。これはコンシューマーとOEMの両方のレベルにかかわることだが、特に問題なのはOEMのレベルだ。5ドルくらいなら大したことはないと思う読者もいるだろうが、決してそんなことはない。それに会員登録更新の費用がばかにならない可能性もある。

 これらの機能(パフォーマンス最適化や優れたバックアップ機能など)の多くは本来、Windowsのコア機能であるべきだと筆者は考える。この分野では、独禁法訴訟が懸念されるような巨大な競争市場は存在しない。

 これら機能は基本的なものだという見方もあるだろう。しかしMicrosoftが良い仕事をすれば、ソフトウェアが少しくらい高くなってもそれだけの価値はあるだろうし、コンシューマーセキュリティの確立の基準も高まるだろう。

 今回のMicrosoftの動きに驚異を感じている既存企業の多くはここ数年、会員料金を値上げしており、彼らの特権が強まってきたということを忘れてはならない。このため、MicrosoftのOneCareサービスに対して筆者が最も期待しているのは、それによって競争の水準が高くなり、競合各社に対して低価格化圧力が強まることだ。要するに、Microsoftは競争をもう少し活発化する刺激を市場に投入する必要があるということだ。

 一方、Symantecは「当社は競争を恐れてはいない。何が最善のソリューションであるかを決めるのはコンシューマーだ」と話している。確かにその通りだろうが、Microsoftの動きがSymantecにとって決して朗報でないのは明らかだ。

 筆者がMicrosoftの無償のスパイウェア対策ソフトウェアによってWebroot Softwareは消え去るだろうと述べたとき、同社は「Microsoftは無能なので、この分野を理解できないだろう」と反論した。

 Symantecもこれと同じように考えているとは思えない。それどころが、SymantecはMicrosoftが良い仕事をするだろうと考え、それに対抗するために自社の製品と価格を見直すだろう。がんばれ、Microsoft!

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