「無制限」に近いコンピューティングパワーを約束する新興企業

Nortelの元幹部ら数名が、ほぼ無制限のサーバリソースのプールを構築できる技術を提供する新興企業、Liquid Computingを立ち上げた。

» 2005年05月23日 20時14分 公開
[IDG Japan]
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 Nortelの元幹部ら数名が、「通信事業者クラスのネットワーキングとハイパフォーマンスコンピューティングを組み合わせて、ほぼ無制限のサーバリソースのプールを構築する」という企業を立ち上げた。このリソースプールは、アプリケーションのニーズに応じて拡大/縮小することができる。

 この会社はLiquid Computingという名前だ。同社が開発中のモジュラー型サーバシステムでは、広帯域光ファイバーインターコネクトを利用することにより、ユーザーのニーズに応じてワークロードを移動したりシステムを再構成したりすることが可能だという。

 同社では、バイオサイエンス分野や政府などハイパフォーマンスコンピューティングを必要とする分野の顧客をターゲットにしている。この夏からシステムの実証試験が開始され、来年には一般向けにリリースされる予定だ。

 Liquid Computingのブライアン・ハーリーCEOによると、このシステムは高さ36.75インチ(約930mm)の筐体に20個のモジュールを収めた構成となっている。各モジュールは4個のAMDのデュアルコア型Opteronプロセッサ、メモリおよびI/Oで構成され、これらのコンポーネントは共通のミッドプレーンに接続されている。複数のシステムを光ファイバケーブルで接続することができ、最初のリリースでは、12台のシステム(960個のプロセッサ)まで拡張可能だという。

 このインターコネクト技術がLiquid Computingの最大の売り物だ。ハーリー氏によると、コモディティコンポーネントとプロプライエタリデバイスを組み合わせることにより、プロセッサ間の遅延を2マイクロ秒以下に抑えるとともに、光ファイバーケーブルで最大6Gバイト/秒のスループットを実現したという。

 インターコネクトのプロプライエタリな部分は「アプリケーションに対して透過的だ」とハーリー氏は強調する。「すべて標準的なインタフェースだ」(同氏)。

 「簡単なソフトウェア命令によって、多数の2ウェイシステム、多数の4ウェイシステム、あるいは多数の8ウェイシステムのように振る舞うようにプロセッサを再構成し、その時点でのアプリケーションの要求に応じてメモリとI/Oを自由に組み合わせることができる」(同氏)

ブレードサーバを超えるコンセプト

 Liquid Computingは当面、HPC(High Performance Computing)市場をターゲットとするが、ハーリー氏によると、同社の技術は企業のデータセンターでも役立つという。

 「われわれは、ストレージ分野でSANやNASが実現したことをコンピューティング分野でやろうとしている。すなわち、管理性、高可用性、リソースの利用形態における柔軟性という面でスケールメリットが得られるようなリソースの集約を可能にしようというわけだ」とハーリー氏は説明する。

 最初のシステムはOpteronプロセッサをベースとするが、ハーリー氏によると、このシステムは「プロセッサに対して非常に寛容」だそうだ。例えばIntelのXeonプロセッサも使用できるほか、同一プラットフォーム内で異なる種類のプロセッサを組み合わせても問題がないという。

 アナリストらによると、このアイデアは今日のブレードサーバに似ているが、そのコンセプトをさらに進めたものだという。

 IDCでインフラハードウェアを担当するリサーチマネジャー、アラン・フリードマン氏は、「彼らはブロードバンド接続に加え、一般的なサーバブレードよりも少し高度なネットワーキング機能を組み込んでいる」と話す。

 高解像度の衛星撮影画像の販売を手がけるコロラド州ロングモントのマルチメディア企業Digital Globeによると、Liquid Computingの技術を利用すれば、自社のデータセンターのリソースをより有効に活用できそうだという。

 現在、DigitalGlobeのハードウェアは、1時間半(同社の衛星が地球を周回する時間)ごとに10分間ないし15分間だけ膨大な処理能力を提供するためにスタンバイしており、それ以外の時間は遊んでいる。

 DigitalGlobeで運用担当上級副社長兼CIO(最高情報責任者)を務めるマーク・ハーグローブ氏は、この処理要求に対応するためにグリッドアーキテクチャを検討したが、グリッドは動的な能力がまだ十分ではないという結論に至ったという。

 「われわれが必要としているのは、1分や2分という単位で負荷を移動してシステムを再構成する能力だ。その点でLiquidのシステムは魅力的だ。まず、単一の筐体あるいは単一のプラットフォームで非常に多数のプロセッサを利用できる。また、これらのプロセッサをビジネスニーズ応じて動的に割り当て、さらにタスクに応じて割り当て直すことができるのだ」とハーグローブ氏は話す。

 アナリストによると、IBM、HP、Sun、SGIなどの大手システムベンダーが今日提供しているグリッド製品やサーバクラスタリング製品よりも優れた製品を提供できることを顧客に納得させることがLiquid Computingの課題だという。

 「彼らは大手サーバベンダーやネットワーキング企業との違いを明確にする一方で、彼らの統合製品が提供する機能を得るためにユーザーが種々雑多なパーツを購入する必要がないことを示す必要がある」(フリードマン氏)

 システムの価格は未定。

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