HPは“MADE IN TOKYO”でワガママに対応します

ラックへの設置やケーブリング、設定作業までを済ませた状態でお手元にお届けします――日本HPは6月29日より「HP Factory Express」サービスを開始した。

» 2005年06月30日 22時15分 公開
[大津心,@IT]

 日本ヒューレット・パッカード(HP)は6月29日、ユーザーの注文に応じて『届いたその日に使えるシステム』を提供するサービス「HP Factory Express」を開始すると発表した。同社のほぼすべての製品に対応し、東京都昭島市の昭島事業所でセットアップから発送までを行う。

山本氏 日本HP テクノロジー・ソリューション企画統括本部 統括本部長 山本久氏

 HP Factory Expressは、注文受付時にユーザーの要望を聞いておき、その仕様に合わせて、工場出荷時にあらかじめOSのインストールやラッキング(ラックにサーバやハードディスクを搭載する作業)、ケーブリング(ラック内に配線を引く作業)を実施した状態で出荷するサービス。サービスは5段階に分かれており、最上級のレベル5では、現地での専門員による設置作業や複雑な構成作業、コンサルティングまで行う。工場での作業は、同社の昭島事業所が組み立てから検査、梱包、出荷までを担っている。

 HPでは従来より一部の製品を対象にした注文仕様生産「HP Directplus」を提供しているが、今回のHP Factory Expressではメニューを整理し、全製品を対象にしたのが特徴だ。日本HP テクノロジー・ソリューション企画統括本部 統括本部長 山本久氏は、「これからは、HP DirectplusとHP Factory Expressが共存していくが、徐々にHP DirectplusからHP Factory Expressへ軸足を移していきたい」と説明した。

 また、エンタープライズ ストレージ・サーバ統括本部 インダストリースタンダードサーバ製品本部 本部長 上原宏氏は、「HP Factory Expressは、国内に生産拠点を持つ当社だからこそ実現したサービスだ。また、UNIXサーバベンダーとして、エンタープライズ顧客の要求を知っている点も大きい」とサービスの開発背景を語った。

 基本サービスとなるレベル1では、CPUやメモリの組み込みやOSのインストール、RAID設定、出荷前検査などを行ってから出荷する。レベル2では、レベル1のサービスに加えて、ラックへの設置やケーブリングを施し、ラック単位で出荷する。レベル3では、さらに現地での設置作業も含まれる。レベル4では、レベル3の作業に加えて、外付けディスクアレイの設定やSANスイッチ設定といったさらに複雑な現場作業も実施する。レベル5では、レベル4までの作業に加えて、OSの詳細設定やオリエンテーションといったコンサルティングサービスまで行う。納期はレベル1で5営業日、レベル2〜3で6営業日、レベル4〜5で7営業日が目安だ。

ラッキング ラッキング作業をしているところ
ケーブリング 芸術的なケーブリングが施されている。このようなレベルになるには、かなりの熟練を必要とするようだ

 HP Factory Expressでは、新たに「HP Factory Expressサービスデスク」を設置して窓口を一本化するほか、従来の現地システム導入サービス「HP Care Pack」が92万4000円だったのに対して、HP Factory Expressのレベル3では29万5400円と約3分の1の料金を達成したという。また、従来は商品1つ1つを梱包していたが、このサービスではラック単位での梱包が可能になるため、梱包材が大幅に減少し、環境にも優しいサービスになっているという。

梱包 通常のサービスだと、1つのラックに入る製品はこのような状態で梱包されてくるので、梱包を解くのも、捨てるのも一苦労だという

 エンタープライズ ストレージ・サーバ統括本部 インダストリースタンダードサーバ製品本部 ビジネスプランニング部 マネージャ 富田浩次氏は、「OSのインストールやシステムセットアップといった作業は、数百台を1回に仕入れるユーザーには負担となっている。金融系のユーザーでは、現地での作業時間を減らすために、昭島事業所でマシンの組み立てやセットアップに加えてデータも工場で入れてしまい、現場ではまさに設置するだけという状態を作った例もある」といった事例を語った。

生産ライン 昭島事業所ではこのようなPCの生産ラインが4本あり、1本あたり1分間に1台の生産が可能だという

 エンタープライズ ストレージ・サーバ統括本部 TSGサプライチェーン本部 牧野益巳氏によると、「ラッキングやケーブリングは、かなり熟練した技術が必要だ。特にケーブリングにおいては、サーバの排気や換気の邪魔にならないような配慮や、サーバメンテナンス時の邪魔にならないような引き回しが必要となる。その辺のケーブルの余らせ具合や長さ調節は一日で習得できるものではない」と強調した。

 また、昭島事業所でPCを生産していることから、「MADE IN TOKYO」をプッシュしたキャンペーンなども実施していくという。

 同社によると、初年度(2006年6月末まで)の売り上げ6億円、HP Factory Expres経由での出荷を1万台にまで伸ばしたいとしている。また、サービス当初は直販のみとし、今年9月〜10月ころからパートナー経由でも提供するという。

 山本氏は、「このサービスによって、『従来システムインテグレータが行っていた設置作業などをHPが取ってしまうのではないか』という声を聞くことがある。しかし、当社はパートナー企業やシステムインテグレータには、ラッキングやケーブリングといった、いわゆる下流の作業は当社の工場に任せて、コンサルティングや教育など上流に力を入れていってほしいと考えている」といった考えを述べた。

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