GNUフリードキュメンテーションライセンスBeginner's Guide(1/2 ページ)

Free Software Foundationが発表したドキュメントをどう使用できるかを定めたGNU Free Documentation License(FDL)は、その後2002年11月に改定されたものの、フリーソフトウェア/オープンソース・コミュニティーからの声は、依然、賛否両論だ。

» 2005年08月11日 20時37分 公開
[Bruce-Byfield,japan.linux.com]
SourceForge.JP Magazine

 Free Software Foundationは、2000年3月、「フリーソフトウェアにはフリードキュメントが必要」という前口上とともに、GNU Free Documentation License(FDL)を発表した。このライセンスは、2002年11月に改定されたものの、フリーソフトウェア/オープンソース・コミュニティーからの声は、依然、賛否両論である。

 ほとんど諸手をあげてFDLを受け入れる人もいる一方で、フリーさが足りないと言って拒否する人もいる。この2通りの反応は、少なくともライセンスの次期改定まで変わることはなさそうである。広く熱く支持されているGNU General Public License(GPL)と比べ、落差は大きい。

 ソフトウェアライセンスは、ソースコードをどのような状況の下でどう使用できるかを定めている。これに対し、FDLはドキュメントをどう使用できるかを定めている。両者間の大きな違いは、FDLが出版の現実に合わせて、アンソロジー、大量出版、翻訳など、さまざまな種類の複写や変更に目配りしている点である。そうした目配りのため、ソフトウェアには不要だった幾つかの区別が、FDLでは必要となっている。

  • コピーには、透明コピーと不透明コピーがある。透明コピーは、フリーで機械可読な形式でのコピーであり、テキストではHTML、グラフィックではPNGがこれに当たる。不透明コピーは、プロプライエタリな形式でのコピーであり、テキストならMicrosoftの.doc、グラフィックならAdobe Illustratorの.aiなどがこれに当たる。透明形式を使用したほうが簡単だが、ライセンスでは、職業的出版での不透明コピーの存在が容認されている。

  • ドキュメントには通常部分と不変部分がある。不変部分とは、複製にあたって変更してはならない部分を言う。ライセンスの意図が損なわれないよう、不変部分には2次的な内容(謝意、出版履歴など)だけを含めることとし、ドキュメントの主題に関する情報はここに含めない。表紙テキスト(表裏の表紙に記すドキュメント関連の短文)も不変部分としてよい。

  • 100通を超える不透明コピーを作成するときは、さらに条件が加わる。例えば、不透明コピー1通につき透明コピー1通を含める、など。

 こうした区別が追加されたことで、FDLはほとんどのソフトウェアライセンスより使いにくいものになっている。この理由から、ライセンスにはドキュメントの出版方法に関する付録が添えられる。

肯定的な反応

 FDLの主要対象分野である書籍出版業界からは、条件付きながら好意的な反応が返ってきている。O'Reilly and Associatesは、これまでにFDLの下で4冊から5冊の書籍を出版しており、「どれも市場で健闘している」と、同社のSara Winge氏は言う。ただし、「どの本にも、ほかのライセンスの下で出版されたライバル本がない」ので、FDLのインパクトを測るのは難しい、とも言う。O'Reillyでは、一般に「著者にライセンスを選ばせる」方針を採っている。著者がオープンライセンスを選んだからという理由で、同社が本の出版を拒否したケースは、これまでにない。

 No Starch PressのWilliam Pollockも同様の意見であり、全体として、フリーライセンスは書籍の露出度と売上の増大に貢献していると信じている。しかし、書籍市場はソフトウェア市場よりずっと小さく、したがって「フリーソフトウェアとフリーブックは違います」とも言う。「ソフトウェア自体はくれてやっても、そのソフトウェア関連のサポートやサービスを販売すれば儲けが出ますが、書籍だとそうはいきません。くれてやれば、それで終わりです。読者が印刷バージョンの購入に興味を示してくれなければ、投資の回収などとてもおぼつきません」

 FDLに対して最大級の賛辞を寄せるのは、オンライン百科辞典計画を推進しているWikipedia Foundationである。Wikipediaの創設者Jimmy Wales氏は、Wikipedia百科辞典項目のために独自のライセンスを起草することも考えていたが、FDLを選ぶことにした、と明かす。それは、第1に、FDLが同ファウンデーションの必要をよく満たしているからであり、第2に「GNUライセンスには重みがある」からだ、と言う。Wikipediaは、現在、不変部分なしのライセンスを使用している。

 FDLでは「Wikipediaの内容の再使用が複雑になる」と懸念する人がいることは、Walesも知っている。仮にライセンス選択の際にクリエイティブ・コモンズ帰属(Creative Commons Attribution)ライセンスが存在していたら、そちらを選んでいたかもしれない、とも言う。だが、FDLは、全体として「すぐれたライセンスだ」というのがWalesの考えである。

       1|2 次のページへ

Copyright © 2010 OSDN Corporation, All Rights Reserved.

注目のテーマ