システム運用管理の業務を対象にしているため、運用部門の現場改善プログラムと誤解されがちだ。システム企画部門やユーザー部門を巻き込んだ体制が必要だ(攻めのシステム運用管理)。
ITILは主にシステム運用管理の業務を対象としていることから、システム運用部門における現場改善プログラムと誤解されがちである。しかし、ITILの導入は単なるシステム運用部門の改善プログラムに留まるものではない。ITサービスをビジネスの視点にたって適切に管理していくためのフレームワークであり、システム運用品質の向上やシステム運用コストの最適化を目指すには、システム運用部門だけでなく、アプリケーション保守部門(多くの企業の場合、アプリケーション開発部門と同義となる)やシステム企画部門、ユーザー部門を巻き込んだ、プロジェクト体制の確立が不可欠だ。
例えば、アプリケーション保守部門は、インシデント管理における二次対応部門、変更管理の変更要求者など、サービスサポートの各プロセスを構成する重要な役割を担っている。また、キャパシティ管理や可用性管理など、サービスデリバリの各プロセスはコストとの均衡政策であることから、システム投資予算を管理するシステム企画部門の参画なしにはプロセスを構成できない。ユーザー部門も、サービスレベル管理を通じて、ITサービスに対する適切なサービスレベル要求を提示するとともに、その達成状況を継続的にモニタリングし、必要に応じてIT部門に是正策を促す役割が求められている。
ITILをシステム運用部門の取り組みとして孤軍奮闘しても、往々にして、新たなプロセスや役割をアプリケーション保守部門やシステム企画部門が容易に受け入れてくれるとは考えにくい。ITILでは多くのステークホルダー(利害関係人)が存在することから、あらかじめこれらステークホルダーをITIL導入のプロジェクト体制に巻き込み、目的意識を共有化した上で、1つ1つプロセスの改善・改革を図っていくことが効果的である。
下の図1は、ITIL導入に関わるプロジェクト体制のサンプルとなる。各体制の機能は以下の通りである。なお、これらのプロジェクト体制は、ITIL導入の際に期限付きで構成されるものであり、新プロセスが導入され、定常状態となった際には解散し、定常組織や会議体に機能が移管されることになる。
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