運用部門だけが孤軍奮闘しても……ITIL導入成功のステップ(2/2 ページ)

» 2005年08月15日 08時02分 公開
[川浪宏之(野村総合研究所),ITmedia]
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 図2は、ITIL導入後の定常状態における、運営体制のサンプルである(ここでは、サービスサポートの運営体制をサンプルとして記述している)。システム運用を情報子会社や外部のアウトソーサに委託している場合などについては、この体制を少し変形させることが必要であるが、体制構築の基本的な考え方はおおむね流用できるるものと思われる。

図2 図2■ITILの運営体制

 各プロセスマネジャーなどの具体的な役割については、別のITIL解説書に譲ることとし、ここでは具体的な企業における役割配置の実践的なポイントについて解説する。もちろん各企業の組織構成の状況により、適用できるものと適用できないものとがあると思われるが、基本的な考え方については参考できるであろう。

プロセスマネジャー配置のポイント

 ITILでは各プロセスにプロセスマネジャーを配置し、当該プロセスの管理者として、プロセス品質の維持管理及び継続的改善を図る役割を与えている。ただし、実際の企業にこのプロセスマネジャーを導入しようとした場合、どの単位でプロセスマネジャーを配置すれば良いかは、ITILの書籍に記述がない。

 多くの企業では、プラットフォーム、ネットワーク、データベース、アプリケーションA、アプリケーションB……といったコンポーネント別に組織が構成されている。コンポーネントに関係なく全体で1人とするのか、またはプロセスマネジャーをコンポーネント別の組織毎に複数人とするのかによって、プロセスマネジャーの配置方法は大きく異なる。

 全体で1人とした場合、特定のコンポーネントにとらわれることなく、プロセス全体の最適化を図れるといったメリットがある。ただし、プロセスマネジャーがすべてのコンポーネントに対して高い専門能力を維持することは困難である。高い専門能力に基づいた迅速な判断がプロセスマネジャーに求められるプロセスについては自ずと限界がある。

 この考え方から「インシデント管理」「問題管理」「リリース管理」の3つについては、プロセス全体を統制するプロセスマネジャーと、各コンポーネントの専門家であるサポートエージェント(仮称)とをコンポーネントごとに配置し、プロセス管理チームとして機能させることが望ましい。

 一方、変更管理や構成管理については、プロセスマネジャー自体にコンポーネントごとの高い専門能力が必要とならなかったり、別途配置する会議体にて補完ができることから、全体として1人プロセスマネジャーを配置することになる。もちろん、プロセスマネジャー不在時にプロセスが滞ることのないように、プロセスマネジャーの補佐役として、数名のサブマネジャーを配置することも考えられる。

会議体配置のポイント

 各プロセスの実効性を高めるためには、プロセスマネジャーなど個々の人に割り当てられる役割とは別に、複数コンポーネントの専門家やほかのステークホルダーが参画する会議体や委員会を配置することが必要である。

 ITILで求められる典型的な会議体としては、CAB(Change Advisory Board:変更諮問委員会)や、PIR(Post Implementation Review:導入後レビュー)などがある。これ以外にも、実務レベルの専門家が参画して問題の根本原因の追究を行なう“問題分析ワークショップ”や、ユーザー部門が参画する“リリース判定会議”など、目的に応じてさまざまな会議体や小規模なワークショップを設置することが有効である。

 これらの会議体は、多くの企業では従来から必要に応じて担当者ベースで実施されてきたものと想定されるが、改めて会議体やワークショップとして明確に識別し、出席者や開催時期、インプット情報、アウトプット情報などを明確化することで、これまで以上に会議体の品質を向上することが期待できる。

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