サービスレベルを高める「発想の転換」ITILを深める! サービスデリバリ編(1/4 ページ)

SLAという言葉に馴染み深い読者は多いのではないだろうか? これに対してSLMという管理手法がある。ITサービスの品質向上の観点からは、SLMの方がより実用的だ(攻めのシステム運用管理)。

» 2005年07月13日 08時07分 公開
[インフォリスクマネージ,ITmedia]

SLAとSLMの関係

 サービスレベルアグリーメント(SLA)という言葉に馴染み深い読者は多いのではないだろうか? ITサービス提供において顧客とベンダー間で合意するコミットラインとなるSLAだが、実際には、大手システムインテグレーターやアウトソーサーがITサービスを提供する際に契約に盛り込むペナルティ項目/条件として適用されているケースが多い。

 例えば、運用管理サービスを提供するマネジメントサービスプロバイダー(MSP)を利用するのであれば、障害を検知してから平均30分以内に事前に指定された連絡先へ、決められた手段で通知することなどがSLAとして挙げられる。

サービス対象別のSLAの種類と分類
サービス対象 分類 SLA項目 内容
ネットワークサービス(回線通信) 可用性 平均稼働率 回線の利用可能な確率を平均稼働率に定める
性能 伝送遅延時間 国内回線品質のパケット送受信の伝送遅延時間を定める
ネットワークサービス(障害管理) 信頼性 障害通知時間 ネットワークサービスの異常を検出し、規定時間以内に障害を伝えることが規定されていること
確実性 障害回復時間 障害を検知してからサービスが復旧するまでの時間が規定されていること
信頼性 死活監視間隔 ネットワーク内の装置間が正常に稼動しているかを監視するポーリング間隔が設定されていること
アプリケーション 応答性 時間アプリケーション応答時間 クライアントPCからサーバに要求を出してから結果が返ってくるまでのレスポンスタイム
信頼性 ジョブ運用のミス発生率 非定型的なジョブ運用の作業に於けるミス発生率を運用ルールに規定していること。
ヘルプデスク 性能 時間内回答率 規定時間内にお客様へ確実に通知する確率を運用ルールとして規定している。
可用性 応答時間遵守率 電話受取(電話受けるまで。トゥルル)が出来なかった確率を運用ルールとして規定している。
保守サービス(HW) 可用性 MTTR 障害発生から修理完了までの平均時間が運用ルールに規定されていること。
保守サービス(SW) 信頼性 原因判明率 原因判明する確率が運用ルールに規定されていること。

※財団法人電子情報技術産業協会著作の『民間向けITシステムのSLAガイドライン』から抜粋

 この場合、平均時間が毎月または四半期平均で30分を上回れば、あらかじめ取り決めたペナルティをユーザー側に支払う(実際には提供するサービス料金との相殺となる)という合意となる。

 これに対して、SLMはそれらを担保するための管理の仕組みといえる。ユーザー側から見れば契約上合意された項目/条件が提供ベンダーにおいて、どのように管理されているか、そのプロセスが担保されている必要があるのである。ITサービスの品質の向上という本来の観点からすると、SLAよりも「サービスレベル管理」(SLM)という概念の方がより実用的なものとして機能する。仮に、契約上実際にはペナルティには至っていなかったとしても、設定した目標数値に従ってお互いが目標管理を行っていくことで、ITサービスのパフォーマンスを定量的に評価する指標にするのである。

 ここで確認したいのは、SLMの最終目標はあくまで定量的な目標を管理していくプロセスだということである。

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