Linuxホーム・オフィスの賢い運用法――その1――(1/2 ページ)

すでに多くの人が使い実感していることだが、Linuxはホーム・オフィスにも十分に使えるオペレーティング・システムである。その運用について、初歩の初歩から考えていこう。

» 2005年08月22日 13時52分 公開
[Corinne-McKay-and-Daniel-J.-Urist,japan.linux.com]

 すでに多くの人が使い実感していることだが、Linuxはホーム・オフィスにも十分に使えるオペレーティング・システムである。高速で安全、信頼性も費用対効果も高い。

 しかし、在宅の仕事に使うなら、アプリケーションを選んでインストールすればLinuxの管理は終わり、というわけにはいかない。ハードウェアを選び、Linuxディストリビューションを適切に選択し、バックアップの予定を組み、災害時の復旧計画を立て、システムのセキュリティに気を配り、適切なISPを探すこと。そうすれば、ホーム・オフィスは、これからも大いに役立ってくれるだろう。たとえ、不測の事態が発生したとしても。

 ここでは、主要なマシンが1〜2台程度の事務所を想定し、業務用情報システムを円滑かつ確実に運営する方法について解説する。対象読者は、書類を書いたり帳簿をつけたり電子メールでやりとりしたりインターネットを使ったりといった、主に通常のオフィス作業にマシンを使っている人である。

Linuxホーム・オフィス管理の基本

 真摯に仕事をしたいのなら、ホーム・オフィスについても真摯に取り組むべきである。安物のハードウェアを使い、バックアップも災害復旧計画もなく、セキュリティはお粗末。おまけに、ISPは一旦接続できなくなるといつ復旧するか皆目見当がつかない。そんな会社で働くことを想像してみるとよい。そのような目に遭いたくないなら、自分のホーム・オフィスでも、そうした状況にならないように対処すべきである。まず、対策の指針となる基本を幾つか挙げる。

 単一障害点(SPOF)を作らないこと。つまり、磁性を帯びた回転円盤1台、複数のアクセス手段を提供していないISP、毎回使っている唯一のバックアップ・ディスク、そうしたものに業務を委ねない、ということである。また、障害の予兆となる情報を通知するよう設定することも重要だ。システム・ログに目を通すのを毎朝の日課にしているというのは、列車が転覆するのを座して待っているようなもの。問題が発生したら自動的に通知するようシステムを設定すべきである。

 オフィスのコンピュータは実運用システムとして扱わなければならない。開発システムではないのである。新しいゲームがリリースされて死ぬほどやってみたくても、その誘惑に負けて、順調に稼働しているシステムを壊すような真似をしてはならない。

 絶対に必要な場合以外はrootアカウントを使ってはならない。たとえ自分しか使わないマシンであっても、安定性と安全性のためにユーザー用のアカウントを用意すべきである。

ハードウェア:基礎を固める

 ハードウェアの状態が悪いと、スタート時点から不利を背負い込むことになる。したがって、ハードウェアを良好な状態に保つことが真っ先に取り組むべき仕事である。これから新しいコンピュータを導入する場合、ネジ回しを使ったことがあるか、あるいは、ネジ回しを使える人が手近にいるなら、自分のマシンを組み立ててみるのもよい。市販の最上位機種にはさまざまなものが詰め込まれていて、それ相応の値段になっている。自分で組み立てれば、その半分の費用で、地元小売店で同じ値段で買うよりも高速で信頼性が高く長期間使えるコンピュータを手に入れることができる。自分にできるだろうかと心配なら、Dan BernsteinのWebページにある「Advice for computer buyers」と「Assembling a computer from components」が頼りになる。そこに書かれた手順に従って、一つ一つ組み立てていけばよい。

自分でコンピュータを組み立てれば、品質の高い部品を選べるだけでなく費用も節約でき、保証期間もかなり長くなる。既製品の保証期間は通例1年間だが、自分で組み立てたマシンなら、CPUやマザーボードやハードドライブなどの基幹部品は3年保証である。メモリーは永久保証付きのものも多い。

 自分でマシンを組み立てるか、自分で部品を選び誰かに有料で組み立ててもらうか、既製品を買うか。いずれの場合も、以下の点に注意しなければならない。

  • 電源は、部品に必要な電力を賄えるだけの容量を持ち高品質なものであること。電源は既製品の中位機種や下位機種でよく問題になる個所だ。標準的なデスクトップ・コンピュータでは、ほとんどの場合、350W以上の容量を持つ電源が必要だろう。

  • RAMについて。ECC(誤り訂正コード)付きのRAMは、1ビットメモリエラーを訂正することができる。この1ビット誤りは、宇宙線などの影響で年に数回発生すると一般に推定されている。1ビット誤りを訂正しないまま運転を続けると、マシンがクラッシュしたりデータが壊れる原因になることがある。準24時間運転のマシンや重たい計算を処理する場合は、25%ほど高価だがECC付きのRAMにして心の平安を買うべきだ。ECC RAMにする場合、マザーボードが対応している必要がある点に注意。

  • ハードドライブは2台用意すること。SPOFをなくすために、2台でミラー構成(RAID 1)にすべきである。これでリスクが全くなくなるわけではないが、片方が不幸にして壊れても、もう一方が生きていてくれる。

  • 冷却装置は十分な性能のものであること。オーバーヒートも下位の既製品でよく発生する問題だ。筐体や電源の冷却が不十分なためである。筐体のファンが2基、電源のファンも2基あることを確かめるべきだ。ハードドライブが2台の場合は、これは特に重要である。

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