Linuxホーム・オフィスの賢い運用法――その1――(2/2 ページ)

» 2005年08月22日 13時52分 公開
[Corinne-McKay-and-Daniel-J.-Urist,japan.linux.com]
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Linuxディストリビューションの選択

 ホーム・オフィスの場合、どのLinuxディストリビューションを使用するかは微妙な問題である。サポートの品質が高くリリースが安定したものがよく、リリースのたびにアップグレードしたくなければ古いリリースに対しても長期間のサポートがあるものが理想的である。初期費用については、あまり気にする必要はない。サポートのよいフリー・ディストリビューションは、有料のディストリビューションよりも実用性が高いことが多いからだ。

 多くのディストリビューションは特定の利用形態を想定している。ホーム・オフィスの場合は、デスクトップ向けディストリビューションが適していることが多い。しかし、技術レベルが極端に低い場合を除き、初心のホーム・ユーザーを対象とするディストリビューションは避けた方がよいだろう。

 ここでは、適切なディストリビューションは通常のデスクトップ向けのものだとしよう。次に問題となるのは製品の寿命とリリース・サイクルである。ディストリビューションをマシンにインストールしたと思ったらすでに古くなっていたとか、3週間ごとにアップグレードしなければ古くなってしまうといった事態に陥りたくなければ、こうした点についてよく検討すべきである。セキュリティ・アップデートが入手しやすく、速やかに提供されるディストリビューションがよい。必要性と技術レベルによっては、解説書の品質と入手方法も重要である。

 評判のよいフリーディストリビューションの中から主だったところを拾うと、Debian、Ubuntu、Fedora Core、Mandriva、SUSEなどが挙げられる。

 Debianは1993年以来一定の存在感を維持しており、Linuxディストリビューションの祖父とも言うべき存在だ。完全無償で、オープンソース・ソフトウェア運動の旗印に忠実である。安定版・テスト版・不安定版という3部構成でリリースされるため、リリース・サイクルが少々長めだ。しかし、安定版は最新ではないにしても、数あるLinuxディストリビューションの中で極めて安定性の高い部類に入る。ディストリビュータの中で最初にパッケージ管理システム(APT)を導入したのはDebianで、これによって依存性の扱いが容易になった。今では、大手ディストリビュータのほとんどがこの方式を採用している。かつてインストールが難しいと言われていたDebianだが、新しいインストーラーにより難しい個所の多くが改善された。もっとも、他のディストリビュータのものに比べると、依然、洗練さに劣ると言わねばならない。

 UbuntuはDebianの不安定版に基づいているが、6カ月のリリース・サイクルと18カ月の製品サポート期間を守っており、この点でDebianモデルよりも優れる。Ubuntuは南アフリカの起業家Mark Shuttleworth氏が設立した企業である。ユーザーに対して寛大で、世界中のどこにでもインストールCDを無償で発送する。資金も力強さも活力もあるが、主要ディストリビュータの中では新参であることを忘れてはならない。

 Fedora Coreは米国市場のトップ企業Red Hatが提供するディストリビューションで、同社を代表するディストリビューションの無償開発バージョンである。セキュリティ機能を特長とし、現行リリースには米国国家安全保障局のSE(Security Enhanced)Linuxパッケージとバッファー・オーバーフロー保護機構が含まれている。Fedora Coreは広く使われており、コミュニティーのサポートが厚い。欠点を挙げれば、よく知られたLinux用Windowsアプリケーション実行環境CrossOver Officeとの互換性に問題がある。ただし、回避策はあるという。Red Hatが公式にサポートするディストリビューションについては製品のサポートはしっかりしており期間も長いが、Fedora Coreの方はRed Hatスタッフではなく開発コミュニティーが管理しているため、あまり当てにはならない。また、開発リリースであるため、リリース間の互換性よりも新しい機能の導入が優先される。

 Mandrivaは、1998年に登場したMandrakeの流れを汲むディストリビューションだ。「親しみやすいLinuxオペレーティング・システム」と触れ込み、インストールしやすいデスクトップ・ディストリビューションとしては最初のものである。Windowsから移行し直観的な環境を求める人たちに多く採用されている。コミュニティーによる開発で、コミュニティー・サポートが厚く、大きな開発者集団を擁している。この企業の利潤追求を責めるわけにはいかないが、新しいリリースはまずMandriva Clubのメンバーに配布され、一般ユーザーにはすぐには手に入らないことに注意しておいた方がよいだろう。メンバーになるには66ドル以上の年会費が必要である。

 SUSEはコミュニティー開発ではなく、Novellが所有し有償スタッフが開発している。したがって、新リリースの無償ダウンロードは市販から1〜2カ月後になる。だが、Novellが管理しているだけあって、SUSEのリリース・サイクルと解説書の品質は、一部のコミュニティー開発ディストリビューションよりも安定している。

次回は、オフィスのセキュリティとISPの選択について解説する。



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