ある小規模企業のWindowsのない1年Trend Insight

実際のところ、Windowsを使わずにビジネスを続けることはできるだろうか? ある小規模企業が全社的にLinuxへと移行した事例からその答えを導き出してみよう。

» 2005年05月25日 16時11分 公開
[Alan-N.-Canton,japan.linux.com]
SourceForge.JP Magazine

 わたしの会社Adams-Blake Co.では、当初、Macintoshをプラットフォームに採用したが1995年にWindowsに切り替えた。ところが、雑用レベルだった管理作業が2001年末にもなると悪夢になった。そこで、次のアップグレードに合わせて、Linuxに移行することにした。

 初めに試みたのはMandrake、次にSlackware、今は、Mepisで数台のマシンを動かしている。果たして、Windowsを使わずに済ませられるだろうか。それが、この1年間の我が社の挑戦課題だった。そして、今のところは、使わずに済んでいる。

 当社の業務は、すべてLinux上で動いている。まず、デスクトップで行っている処理から紹介しよう。経理処理にはMoneydanceを、ワープロにはCodeWeaversのCrossOver Officeの下でMicrosoft Wordを、表計算とプレゼンテーションにはOpenOffice.orgを使っている。また、グラフィックスはGIMPで作成し、WebページはQuantaとBluefishで編集、給与はPayCycleで計算している。サーバサイドでは、メディアリストをMySQLに置き、フロントエンドはphpMyAdminで作成している。当社では複雑なアプリケーションを手早く作るため、MySQLにAccess風フロントエンドが必要なのだ。最後に、自社のWebサービスJAYA123を利用して、受注処理・レポート処理・出荷処理を行っている。

 しかし、税務処理については適当なものがなかった。あるソフトウェアを試してみたが、CrossOver OfficeでもWineでもWin2Linでもうまく動かなかった。

 そこで、今回は、個人税務についてはTaxActをオンラインで利用することとし、会社関係の1120関連書類については国税局の専用用紙に、最近登場したLinux版Adobe Reader 7.0を使って記入することにした。税務ソフトウェアに比べれば使いにくいが、小規模企業の税務は簡単であり、専用用紙を使って書類を用意するのは難しい作業ではない。小規模企業のためのオンライン版1120関連書類のほとんどは、現在Internet Explorerが必須だが、来年にはLinux版Firefoxから使えるようになるだろう。

 今最も必要なものは何かと言えば、データの入力フォームを手早く作成でき、レポートが作れるAccess風MySQLフロントエンドだ。Linuxには出来のよい(そして安価な)レポートジェネレータ(プロプライエタリだがCrystal Reportsのようなもの)がない。これは、ぜひとも必要だ。Rekallknodaなどは開発途上にあり、Accessの堅牢性には及ばない。phpMyAdminをふんだんに使えばしのげるが、代替にはならない。GUIアプリケーションを数時間でプログラムできる本当によい統合開発環境がないのだ。

 当社の業務は他社と大差はない。製品(書籍)があり、サービス(コンサルティング)があり、従業員がいる。それだけだ。だから、当社がWindowsなしで済むなら、他社でもWindowsなしで済むはずである。

 最後になったが、再起動の回数、感染したウィルスの数、侵入してきたアドウェアやスパイウェアの数についても触れておこう。そうした事例は、いずれも、Z-E-R-O(皆無)だった。

 この1年間Windowsを再起動することはなかったが、これは前代未聞の出来事だ。Linuxが小規模企業に浸透する歩みは遅かったが、今では、Linuxで済ませることがほぼ可能になっている。もし、出来のよいレポートジェネレータとデータベース・フロントエンドがあれば(新しいOpenOffice 2.0にあるかもしれない?)、そのとき、LinuxはWindowsに肩を並べることができるだろう。

Alan Canton─Adams-Blake Company(本社カリフォルニア州フェアオークス)の社長。同社の製品には、Webベースの中小規模企業向けバックオフィス・アプリケーションJAYA123などがある。


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