三菱電機、組み込み用高性能暗号アルゴリズムを開発

三菱電機は、機器組み込み用の暗号アルゴリズムとして小型・低消費電力な「BRUME」と、超高速処理が特徴の「BROUILLARD」を開発。同社の「MISTY」と同等の安全性を保ちつつ、用途を限定することで小型化や高性能化を果たした。

» 2005年09月12日 18時08分 公開
[ITmedia]

 三菱電機は9月12日、機器組み込み用暗号アルゴリズム2種類を開発したと発表した。RFIDタグなどにも搭載可能な小型・低消費電力な「BRUME」(ブリューム)と、超高速処理が特徴の「BROUILLARD」(ブルイヤール)。同社で自動車や監視カメラなどの用途向けに実用化する方針。

 同社がちょうど10年前の同じ日に発表した暗号アルゴリズム「MISTY」シリーズの小型版、高速版として、それぞれフランス語の「霧」「霞」から名付けた。

 BRUMEは小型機器の認証用途などを想定。ソフトウェアサイズが1Kバイト以下、ハードウェアサイズが3Kゲート以下と、MISTYの約半分に小型・低消費電力化した。ICタグや自動車のキーなどにも組み込むことができる上、チップコストの削減も可能になる。

 BROUILLARDは、MISTYの10倍に達する高速処理性能が特徴。Pentium 4/3GHzで毎秒約1Gバイト(鍵長128ビット)のデータ処理が可能で、高速で知られる「RC-4」の「3倍は早い」(松井充・同社情報技術総合研究所情報セキュリティ技術部長)という。監視用ネットワークカメラの動画を暗号処理することで傍受を防ぎ、さらにリアルタイム伝送も行うといった用途を想定している。

photo 監視カメラの撮影画像(ディスプレイ内左上)をトリプルDES(同左下)、BROUILLARD(同中央)、MISTY(同右)でリアルタイム暗号処理するデモ。BROUILLARDは撮影画像とほぼ同じ動画が再生されているが、MISTYはややコマ落ちし、トリプルDESは紙芝居のようになった。同様のデモは「CEATEC JAPAN 2005」(10月4〜8日、幕張メッセ)で公開する

 両アルゴリズムとも、暗号鍵やデータ処理単位の長さなどを顧客がカスタマイズできる仕様とした。顧客が自らカスタマイズすることで、企業機密を保ったまま独自の暗号処理を機器に組み込むことができるとしている。また暗号鍵長の変更で輸出審査の簡素化も期待できると見ている。

 MISTYはW-CDMAとGSMの標準暗号(KASUMI)に採用されているほか、今年5月にはISOによる国際標準規格に認められるなど、国際的に高く評価されている国産アルゴリズムとして知られている。今回発表した新アルゴリズムは、MISTYと同等の安全性を保ちつつ、アプリケーションを限定することで小型化や高性能化を図り、従来は適用が難しかった分野に暗号処理を導入するのがねらいだ。

 今後、同社でBRUMEを自動車用スマートキーシステムに、BROUILLARDを監視カメラに搭載していく計画。またルネサステクノロジが認証用マイコンの暗号ライブラリとしてラインアップする予定としている。

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