年々肥大化するソースコードにEclipseへの期待Webアプリ開発の新基準(1/2 ページ)

ソフトウェア規模を計る基準とは? フレームワークやアノテーションなどの登場によって、従来までのソースコードの行数で規模判断することは非現実的となりつつある。Eclipse Japan WGの事務局を担うNTTコムウェアから、高木氏にアプリ開発の課題を説いていただく。(オンライン・ムック:Webアプリ開発の新基準)

» 2005年10月11日 08時00分 公開
[高木浩則,ITmedia]

 2005年初めに設立された「Eclipse Japan Working Group」(関連リンク)。国内でEclipseを開発基盤として利用する際、指針として示せるようNTTコムウェアが事務局となり、富士通、日立製作所、日本電気、日本アイ・ビー・エム、日立ソフトウェアエンジニアリングが幹事メンバーで発起されたものだ(関連記事)

 このコラムでは、Eclipseによってこれまで何が得られ、今後の開発形態がどのようになっていくかをNTTコムウェア、プロジェクト管理統括部・開発技術部門の高木浩則氏に執筆いただいた。


 このコラムでは、現在の品質管理手法の課題、並びに今後のEclipseへの期待について述べていこう。

システム開発の複雑化

 業務システムの形態は、1990年以前には「ホスト集中型システム」、1990年代前半「C/S型システム」、1990年代中盤以降には「Webシステム」へ変化しており、プログラミング言語もCOBOLからJavaへと移り変わっている。

 このような中で、長年SEを経験している人からは、昔のCOBOL技術者は1年で育ったのになぜ今のJava技術者は1年で育たないのか? などと言われることがある。

 実は「Javaを使ってWebシステムを構築する」という言葉の裏には、Java言語のスキルだけでなく、HTMLを始めJavaScript、JSP、Servlet、EJB、XMLなど、さまざまな技術スキルが必要という背景がある。さらに設計時には、デザインパターンのスキルが相まり、実装時にはStrutsなどのフレームワークスキルも必要となってくる。

 つまり、「Javaを使ってWebシステムを構築する」ためには、比較的従来よりも多くのスキルセットが必須となっており、これがJavaの技術者が1年で育たない/育ちにくい主な原因ではないだろうか。

 一方で、開発環境の面では統合化が進んでおり、分析、設計、コーディング、試験に至るすべてのソフトウェア開発工程の作業がEclipse上に統合されつつある。もちろん、HTML、JavaScript、JSP、XMLなどを扱うエディタ類もEclipse上に統合されつつあるわけだ。

ソフトウェアメトリクスとソフトウェア品質

 ソフトウェアは動きすべてが直接目に見えないものだけに、その規模が把握しづらい。ソフトウェアメトリクスとは、高品質なソフトウェアの構築を目的として、ソフトウェアのさまざまな特性を可視化する客観的な数学的尺度や測定法のことを指す。

 一例として、ソフトウェア規模を示す代表的なメトリクスには、ソースコード行数を表すSLOC(Source Lines Of Code)や、ソフトウェアの機能の規模を表すファンクションポイントなどがある。

 HTML、JavaScript、JSP、Servlet、EJB、XMLなどさまざまな技術を活用してWebシステムが開発されていることは、実は、ソフトウェア規模見積もりや進捗把握、ならびにソフトウェア品質判定にも大きな影響を与えている。

 現状のソースコード規模見積もりにおいて、どの部分の規模を見積もっているのか? またソースコード規模に対しての試験密度やバグ密度を議論してソフトウェア品質判定を行う場合には、どの部分の規模をベースに議論しているのかという根本的な点に課題がある。

 ここで、JSPでの極端な場合を例に、ソースコード規模の課題を考えてみよう。

 HTML、JavaScript、Javaが混在したひとつのJSPソースコードにおいて、HTMLコードで1000行のプログラムと、JavaScriptコードで1000行のプログラムでは、ひとまとめで1000行のJSPと捉えられがちだ。

 しかし、試験密度、バグ密度を同様に議論してよいのだろうか?

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