MySQL 5、正式リリースは11月の予定

MySQLは、企業にとって重要な機能を盛り込んだ「最も重要なアップグレード」であるMySQL 5で、ほかの製品からの乗り換え促進を狙う。(IDG)

» 2005年10月14日 13時01分 公開
[IDG Japan]
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 MySQLはオープンソースデータベースのバージョン5を11月にリリースする考えだ。同社はこのメジャーアップグレードが、同社を企業顧客の間でもっと有力なプレイヤーにしてくれると期待している。

 同社はこの製品の最終テスト版になるかもしれないリリース候補(RC)を約2週間前にリリースした。もしも“ショウストッパーバグ”が出てこなければ、11月に正式な商用版をリリースすると同社のコミュニティーリレーション担当副社長カイ・アルノ氏は語る。

 同社はバージョン5を最も重要なアップグレードと呼んでいる。Oracle、IBM、Microsoftの製品で以前から提供されていた、企業にとって重要と考えられる幾つかの機能が加えられるからだ。中でも重要なのがトリガー、ビュー、ストアドプロシージャだ。

 またMySQLは、データベースがエラーチェックなどの一部の共通のタスクを処理する方法を変えて、ほかのデータベースと同様に振る舞うようにした。データベース管理者が別の製品からより容易に乗り換えられるようにして移行を促進することが狙いだ。従来の処理方法もオプションで利用でき、また現行MySQLアプリケーションのほとんどはバージョン5でもそのまま実行できると同社共同創設者で「オープンソーサラー」の肩書きを持つデビッド・アクスマーク氏は説明する。

 サブスクリプションサポートサービス「MySQL Network」の価格は変わらず、必要なレベルに応じてサーバ1台につき年間495〜3995ユーロ。またこの製品はGPLおよびほかの製品と一緒に再配布できる商用ライセンスの下で利用できる。

 MySQLは常に、OracleやIBMと直接は競争していないと主張し、好んで自社の製品を「補完的なもの」と呼んできた。これは同社ソフトに限界があったからか、あるいは大規模な競合企業を刺激したくなかったためかもしれない。いずれにしても、今やその状況は変わりつつある。

 MySQLはOracleのハイエンド事業は狙ってはいないが、バージョン5の新機能により、同製品はERPアプリケーションまで含む、より幅広いエンタープライズタスクに適したものになるとアクスマーク氏。

 「データセンターに攻勢をかける気はないが、ほかにも多数のプラットフォームがある。場合によっては、それに対してエンタープライズデータベースは多すぎるかもしれない」(同氏)

 同氏はMySQL 5を広範なデータ管理ニーズに対応した、余分な飾りのない製品と位置づけており、「ロールスロイスではなく、エコノミークラス」だとしている。ほかの幹部はデータベースはDVDプレーヤーのようにコモディティ化が進み、あるデータベース製品が別の製品に容易に置き換えられると示唆している。

 一部の基本的なタスクについてはそうかもしれないが、IBM、さらにMicrosoftはMySQLよりもずっと先を行く機能を提供し続けていると調査会社Ovumの業界アナリスト、ゲリー・バーネット氏。

 「(Oracle会長の)ラリー・エリソン氏がコーヒーを飲んでいるときに『データベースはコモディティか』と聞いたら、シャツをコーヒーまみれにされてしまうだろう」(同氏)

 バーネット氏は、少なくともすぐにMySQLが新たなエンタープライズ事業を起こすかどうかについては懐疑的だ。ライセンス料とメンテナンス料はデータベース所有コストの一部でしかなく、MySQLはユーザーが同社プラットフォームに移行した場合の明確なメリットを示さなくてはならないと同氏は指摘する。

 MySQLが最もよく知られているとは言え、オープンソースデータベースはほかにもある。Apache Software Foundation(ASF)は「Apache Derby」を提供しており、IBMは昨年「Cloudscape」をオープンソース化し、PostgreSQLベースのデータベースを提供する企業も複数ある。

 さらに、OracleとIBMは比較的小規模な顧客向けに低価格版データベースをリリースしており、両社ともオープンソースコミュニティーを取り込むために非中核製品のソースコードを公開している。

 Oracleは10月7日、オープンソースデータベース企業Innobase OYを買収した(10月8日の記事参照)。InnobaseのストレージエンジンはよくMySQLの一部として使われている。OracleはMySQLとの契約を更新すると約束したとアクスマーク氏は言う。もしもうまくいかないことがあったら、MySQLはいつでもInnoDBの開発を「フォーク」させて別のバージョンを作れると同氏は語りつつも、そうしたくはないと述べた。

 MySQLはほかにも課題に直面している。現在、同社のプラットフォームで動作保証されているERPアプリケーションはないが、SAPと独金融ソフトベンダーAgressoとともに動作保証に取り組んでいるという。SAPとの共同作業は1年以内に終わるかもしれないとアクスマーク氏は見込んでいる。

 それでも、MySQL 5は確かにMySQLを「真のデータベース」の階級へと押し上げるとOvumのバーネット氏。それによりもっと多くのISV(独立系ソフトベンダー)がMySQLを自社製品に組み込むはずだし、MySQLはおそらく新たな環境に導入されるだろうと同氏。またMySQLはNovell、Dell、Hewlett-Packardから支持を得ており、これら企業はすべて同社製品向けのサポートサービスを再販すると発表している。

 「同社は、ERPとトランザクションベースのアプリケーションに関してずっと信頼性が高まった。だが、(オープンソース)コミュニティーの人々が望むよりも進展は遅い」(バーネット氏)

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