ERP導入で「カスタマイズの限界は3割」と言うけれど……「次世代」中堅企業はITで利益を出す(2/4 ページ)

» 2005年11月28日 08時19分 公開
[杉山 正二,ITmedia]

業務を可視化せよ

 業務アプリケーションやERPソフトウェアなど、既に実績のあるパッケージソフトウェアを導入するメリットの一つは、業務を標準化できること、あるいはその前段として、業務を可視化できることにある。業務を可視化する、すなわち、「目に見える」ようにすることによって、無駄な業務や効率の悪い業務を見つけることができるし、業務改善が可能な領域を見極めることができる。

 そのための手段として、フィットギャップ分析という手法を活用することをお勧めする。実際にパッケージソフトウェアを導入するかどうかは別にしても、ある特定のソフトウェアの機能と現在自社で行われている業務とを比較検討し、どこがパッケージと合っており、どこが違っているかを整理することである。

 ポイントは、パッケージとの違い、すなわち、ギャップがある部分である。このギャップが本当に自社の強みにかかわる、すなわち、自社の「コンピテンシー」に直接かかわる部分かどうかを見極めることである。もし、かかわりがない、あるいはかかわりが少ない場合、業務の改善や、時には思い切って、その業務をなくすくらいのことを考えるべきである。

カスタマイズは最小限に

 これはよく言われていることで、いまさら繰り返す必要もないかもしれないが、あえて強調しておきたい。フィットギャップ分析の結果、必ずギャップは出てくる。特に現場からは、多くのギャップを指摘され、それにすべて対応するために、非常に多くのカスタマイズを行い、結果として、パッケージソフトウェアを導入したのか、一からカスタムシステムを開発したのか、分からなくなった例もよく聞く。

 通常、「カスタマイズの限界は3割」といわれるが、実際には10%以下くらいに抑えるべきであろう。しかし、「それでは業務が回らない」という担当者の声も強いかもしれない。これにはまず、業務の廃止、業務改善、業務の変更などで対応できないかを検討する。あくまでも経営および全社最適の視点から検討すべきである。

 もし、そういった検討を十分行っても、まだギャップが残り、カスタマイズが必要になった場合はどうするか? ここでも、すぐにカスタマイズに走るのではなく、アドオンや別ソフトウェアとの組み合わせを考えるといい。パッケージのソフトウェアのメリットの一つは、アップグレードによって、大きな追加投資なく、最新機能や、ユーザーの要望を反映した使い勝手の良い機能を使用できることである。

 カスタマイズが多くなると、アップグレードしたときの負荷が大きくなり過ぎ、コストも跳ね上がる。最悪のケースでは、アップグレードはほぼ不可能という状況さえ発生する。例えば、アドオンや別ソフトウェアとの組み合わせにしておけば、アップグレード時にもインタフェースの部分だけを改修すればいい。

 うまくいけば、再テストだけで済むことも多い。むやみにカスタマイズするのではなく、アドオンにする、という方が、開発費もその後のメンテナンスやアップグレードへの対応でも、コストを抑え、パッケージソフトウェアのメリットを享受できる。

 アールエスコンポーネンツでも、ERPが得意としない帳票出力は、カスタマイズではなくアドオンでPC上にシステムを開発し、ERPからのデータを連携するようにした。この結果、アップグレード時の影響は最小限(データ連携用のテーブルフォーマットの確認とテストくらい)にとどめることができた。

Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.

注目のテーマ