皿を認識するためのセンサーは、お客の座るホールとキッチンの境界に設置されている。キッチンで認識されたあと、別のセンサーで認識する際に皿がなくなっていたら、お客が食べたと判断する。350メートル移動した皿は、自動的に排除されるようになっている。
また、各テーブルにはインターフォンが備わっており、これを使ってオペレーターが注文を受ける。オペレーターは、端末のボタンを押してキッチンに注文を伝える。
「注文の受け付け方については、各テーブルにタッチパネルなどを設置するという方法もあるわけですが、そうすると1店舗あたりのコストが大きくなってしまいます。また、レーンに流すネタについては、音声認識を使うことも考えましたが、そうすると運用が大変です」(山尾氏)
RFIDタグを入れたことにより、データの傾向が実によく見えるようになってきた。地域や時間帯による違いがはっきりしてきたため、システムを入れる前に比べて5%も廃棄率を下げることができたという。
「システムを入れたことで従業員の意識も変わってきたと思います。廃棄率に注意したり、売れ筋が何か、どう流せばよいのかを積極的に考えるようになってきました」(山尾氏)
回転寿司の皿の流し方には、多くのノウハウが含まれている。売れるものを流すだけでは利益が出ないし、安いが人気がないものを出すだけでは食べてもらえない。絶妙なバランスが求められるのだ。上手な流し方がわかるようになるには、普通何年もかかる。そこで、同社では、現在の状況を分析し、最適な流し方の指示をキッチンのディスプレイに表示するシステムを試験的に導入し始めている。現在このシステムを導入しているのは2店舗だが、将来的にはすべての店舗に広げていく方針だという。
また、今後はRFIDシステムをほかのシステムと連携させ、売れ筋やパターンのデータをWeb上で迅速に把握できるようにしていく予定だ。
「流し方の指示以外の部分でも、考えればいくらでも改良点はあります。天候の変化に合わせて、どう仕込みの量を調整するかなどについても考えていかなければならないでしょう」
単にITを使うだけでは、効果的ソリューションにはなりえない。
「重要なのは、現場で使えるものを入れるということですね。そうでないと、いくら技術的によいものであっても、宝の持ち腐れになってしまいます。以前の画像認識のシステムではすごい損失を出して、懲りました。やはりテストを行い、現場からのフィードバックをもらってそれを取り入れていかないと。(システムを導入した)今でもそうです。常にフィードバックが必要です」
「もう1つ、トップの強い意志も必要です。弊社の場合、最初の画像認識システムは失敗しましたが、単品管理を絶対やるという社長の意志がなければRFIDタグシステムも実現できなかったでしょう」
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