東京多摩地区は、金型製作、メッキ、研磨といった小規模な工場が集中しているエリアだ。金属熱処理を専門とする、多摩冶金株式会社もここにある。同社は、Webを利用して自社工程を顧客に公開し、業務の効率化と顧客満足度の向上、営業力の強化を図っている。
会社データ | |
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会社名 | 多摩冶金株式会社 |
所在地 | 東京都武蔵村山市伊奈平2-77-1 |
主な業務内容 | 機械、電気、電子部品の金属熱処理加工 |
資本金 | 1480億円 |
URL | http://www.tamayakin.co.jp/ |
東京多摩地区は、金型製作、メッキ、研磨といった小規模な工場が集中しているエリアだ。金属熱処理を専門とする、多摩冶金株式会社もここにある。同社は、Webを利用して自社工程を顧客に公開し、業務の効率化と顧客満足度の向上、営業力の強化を図っているという。導入したシステムの概要とその効果について、同社取締役工場長の間宮一氏と、企画室長の兼村勇一氏にうかがった。
システムの概要を説明する前に、まず多摩冶金の業務の特殊性について述べておく必要があるだろう。一般的に熱処理というと、金属部品に熱を加えて急冷し硬度を高める「焼き入れ」、弾性を高める「焼き戻し」、ステンレスなどの耐食性を高める「固溶化」といった処理が含まれる。対象となるのは、工作機械の部品、電気部品、金型、自動車部品、航空機部品など極めて多岐に渡り、開発中の試作品も持ち込まれることがあるという。
「注文ロットは数グラムのパーツを1つということもあれば、20キログラムを何十箱といったこともあります」(間宮氏)という具合で、量についてもまったく一定していない。
もう1つ厄介なのが炉の温度設定だ。1つの熱処理炉には1種類の温度設定しかできないが、注文によって最適な温度設定は異なる。「同じようなものを1つの炉に入れていかないと、納期も間に合わないし、コストもかかってしまいます」(兼村氏)
そして、顧客からは頻繁に状況確認の電話が入ってくる。現在作業中の部品だけでなく、以前に行った処理内容についての問い合わせも多く、電話応対と書類の検索に大変な手間がかかっていたという。
同社では早い段階で生産管理にオフコンを導入し、効率化を図ってきた。しかし、システムはCOBOLというプログラミング言語で書かれており、最近の開発環境に比べるとメンテナンス性に劣る。画面や帳票のレイアウトを変更するだけでも大変な手間がかかっており、システムを入れ替えることにした。新しいシステムは、Linuxベースのサーバーとオープンソースのデータベース「PostgreSQL」の組み合わせだ。まず、取り組んだのが、職人のノウハウをデータベース化することである。
「現場では何度の温度で処理をしたらよいのかを指示する、作業指示書を作ります。しかし、ほかの会社でもそうだと思いますが、うちでも職人が定年退職でもしてしまうと現場での判断ができなくなってしまう。そこで「こういう材質で、これだけの硬さ」という要求を入力すれば、推奨温度範囲が表示されるようにしました。温度範囲が重なる品物ならまとめて1つの炉に入れて採算が取れるように持っていけます」(間宮氏)
この作業指示書をバーコードで読み取るだけで、進捗状況の入力や納品処理が自動的に行われるようになっている。
「もう1つ重要なのがトレーサビリティ(追跡可能性)です。熱処理の多くは、処理後も品物の外見が変わらないんです。そのため何か問題があったとき、どのような処理を行ったのか調べられなければいけません。弊社では1日に300くらいの指示書が出るのですが、従来は紙ベースで保管していたため、問い合わせがあるたびに書庫へ行って、書類を探し出してと大変な手間がかかっていました。お客様は注文に出した日時を必ずしも正確に覚えていらっしゃるわけではありませんし。作業指示書をデータベース化しておけば、お客様の質問にすぐ答えられ、事務の効率を上げられます」(兼村氏)
これだけでも大きな改善だが、同社はさらにユニークな仕組みを取り入れることにする。それが作業工程のWeb公開である。
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