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» 2005年12月14日 09時20分 UPDATE

東北大の次世代融合研究システムが本格稼働――計算と実験の融合が進む (1/2)

東北大学流体科学研究所のスーパーコンピュータ「次世代融合研究システム」が本格稼働を開始した。複雑な実現象をありのままに再現することで、流体科学研究のさらなる進化を目指す。

[西尾泰三,ITmedia]

 東北大学流体科学研究所は12月8日、「次世代融合研究システム」の披露式を開催、スーパーコンピュータが稼働している様子を公開した。

 同研究所は、流体科学に特化した研究所として流体情報研究をリードしており、設立当初からスーパーコンピュータのユーザーだった。当初は演算能力の限界からその研究領域も2次元の非定常および3次元の定常のものしか扱えなかったが、スーパーコンピュータのリプレースとともに、3次元の非定常や複雑性をめぐるさまざまな問題も扱うことが可能となり、4世代目となる今回のシステムではさらに、複雑な実現象を高精度に再現するまでに至った。

 同研究所所長の井小萩利明教授は、「今回のシステムが計算と実験の融合に大きな役割を果たす」と話し、大規模数値解析はもちろん、実験装置との融合、つまり研究手法の融合を図るとともに、ほかの研究分野の融合を進めることで流体科学研究の分野をさらに切り開いていくと今後5年間の取り組みについて語った。


●上段左:3次元可視化サーバおよび次世代融合インタフェースサーバとして使われている「Silicon Graphics Prism」
●上段右:ずらりと並ぶ「SGI Altix 3700 Bx2」
●中段左:1ペタバイトの容量を持つ二次外部記憶装置には日立の「SANRISE9585V」が
●中段右:テープライブラリは「STK PowerHorn9310」。こちらも1ペタバイト
●下段左:「NEC SX-8」。数は少ないが存在感がある
●下段右:SX-8に接続された「iStorage」。RAID5で20Tバイト

 本格稼働を開始した次世代融合研究システムは、スカラー機とベクトル機で構成される計算サーバ群、計算結果の画像解析のための3次元可視化サーバ、実験装置を接続して計算シミュレーションや実験解析をリンクするための次世代融合インタフェースサーバを中核として構成されている。計算サーバ群は、スカラー並列計算システムに日本SGIの「SGI Altix 3700 Bx2」、ベクトル並列計算システムにはNECの「NEC SX-8」を採用している。

 ストレージおよびテープライブラリはSAN(Storage Area Network)で接続されている。スカラーとベクトルでSANが分離しているが、スカラー機側のSANには1ペタバイトのストレージも接続されている。

 実験装置からのデータはインタフェースサーバを介してこれらの計算リソースを利用可能で、3次元可視化出力装置を備えたリアライゼーションワークスペースに出力することも可能となっている。

新システム全体図 新システム全体図(東北大学流体科学研究所のWebサイトより)
tn_3d2.jpg 実験装置の一つ。この装置では動脈瘤(りゅう)に関する研究を行っている
tn_3d.jpg 3次元可視化出力装置に出力したところ。ディスプレイの大きさは国内でも最大級だという

HPC分野のトレンド

 システム図を見ると、次世代融合研究システムではスカラー機に重きが置かれている。この傾向は一つ前のシステムでも同様だった。

 同研究所の設立から2世代目までは、「CRAY Y-MP8/4128」や「CRAY C916/161024」といったベクトル型計算機を使用していた。その後、スカラー機への移行を進め、第3世代のシステムでは「SGI ORIGIN 2000」と「SX-5」というスカラーとベクトルの混合システムに移行している。ユーザーはジョブの特性に応じてベクトル機とスカラー機を使い分けている。

 同システムの理論演算性能は9.2TFLOPSに達するが、LINPACKで算出された性能が実際のプログラムでそのまま発揮されることはない。そのため、実性能をいかに高めるかがポイントとなるが、同研究所の場合、ベクトル機で40%、スカラー機で20%程度の効率を目標にしているという。

 前回に引き続き、スカラー機に日本SGIのマシンを導入したのはどういった理由からか。もちろん日本SGIがプライムコントラクターであることが大きいが、1Tバイト超の共有メモリの扱いに対する同社の技術力が評価されたためだといえる。

 また、1ペタバイトの容量を持つストレージも注目すべきだろう。運用していく中で徐々にストレージを追加した結果、1ペタバイトを超えるストレージを持つシステムは珍しくないが、システムの立ち上げから1ペタバイトのストレージを持つシステムは国内では珍しい。この部分は日立のSANRISE9585Vが導入されているが、3000以上のスピンドルでRAID5を構築するのは、同社にとっても非常に大変な作業であったと思われる。

 多くの点で前例がない今回のシステム構築、システムインテグレーターとして取り組んだ日本SGIも相当に苦労したのは想像に難くない。披露式では日本SGI代表取締役社長兼CEOの和泉法夫氏が「システムを入れておしまい、ということはあり得ない。これからもサポートを含めて全面的にお手伝いさせていただく」と語っている。現在、日本SGIから数人が同研究所に常駐し、サポートやメンテナンスの作業を行っている。

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