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» 2006年01月12日 13時00分 UPDATE

企業が知っておくべき法律知識:日本版LLP、日本版LLCとは? (1/2)

最近、よく耳にするようになった日本版LLPや日本版LLCといった単語。これまでにない新しい組織形態のことであるが、その内容はあまり知られていない。その利用場面も踏まえて解説しよう。

[第一法規]

lalalaw最近、日本版LLPや日本版LLCという名前をよく耳にします。これまでにない新しい組織形態のことと聞きますが、どのような点でこれまでの組織と異なるのでしょうか。また両者に違いはあるのでしょうか。


lalalaw海外には、英国のLLP(有限責任組合)、米国のLLC(有限責任会社)など、出資者の責任が出資額に限定され(有限責任制)、出資者が自由に組織を運営でき(内部自治の原則)、かつ組織の段階では課税されず出資者段階で課税される(パススルー課税)、という3つの特徴を併せ持つ組織形態が存在します。

 わが国では、株式会社や有限会社などの会社組織や、民法の組合などの組織形態が存在しますが、株式会社などは有限責任制を有している一方で、そのほかの特徴は有していません。また、組合は有限責任制以外の特徴を有していますが、出資者の責任は無限とされています。

 海外のLLP、LLCはこうした従来の組織形態の双方の特徴を併せ持つ中間的な組織形態であり、日本でもこのような組織形態の法制化が進められています。

 日本版LLPは「有限責任事業組合契約に関する法律」において、民法の組合を発展させた新しい組合形態である有限責任事業組合として法制化されます。つまり、民法の組合に、出資者全員の有限責任制が付与された形になっています。

 一方、日本版LLCは、会社法制の現代化の流れの中で成立した「会社法」において、現行の合名会社、合資会社を発展させ、法人格を持つ新しい形の会社である合同会社として法制化されます。つまり、現行の合名会社、合資会社が有する内部自治原則に加えて、出資者全員の有限責任制を併せ持つ新しい会社組織として整備されます。

 このように、日本版LLPと日本版LLCは法人格の有無という点で大きな違いがあります。この違いは、3つ目の特徴であるパススルー課税に大きく影響します。なぜなら、現行の法人税法では、法人格の有無によって法人税の課税の要否が決められるからです。このため、現行の法人税法を前提とすれば、法人格を持つ日本版LLCでは法人段階での課税が避けられず、パススルー課税の特徴を備えることは難しいと思われます。一方、日本版LLPは法人格のない組合の発展形として創設されることになるため、パススルー課税の特徴を備えることができます。

解説

1.LLP、LLCとは

 LLPはLimited Liability Partnership、LLCはLimited Liability Companyの略で、それぞれ「有限責任組合」、「有限責任会社」などと訳されています。

 経済環境がかつての重厚長大型から知識集約型の環境に変化する中で、従来以上に人材、つまり組織の構成員の持つ知識や能力が重視される環境となっています。こうした流れを受け、株式会社のように資本集約型ではなく、構成員の能力、知識をより重視する人的資産重視型の組織形態の必要性が高まる中、海外では英国のLLP、米国のLLCなど、新しい組織形態が誕生し、さまざまな分野で活用されています。

 こうした組織形態は、おおむね次の特徴を備えています。

  • 有限責任制

 有限責任制とは出資者の責任が出資額の範囲に限定されることを意味します。有限責任制の下では、仮に組織の段階で大きな損失を計上しても、出資者はこのすべてを負担する必要はありません。あくまでも自らの出資額が回収できないリスクを負うだけです。このため、出資者はリスクの高い事業にも挑戦しやすくなります。

  • 内部自治の原則

 内部自治の原則とは、出資者が組織運営を自由に行うことができる原則です。従来の組織形態である株式会社では取締役や監査役などの機関を置くことが法律で強制されます。また、出資者は出資額に応じた多数決での意思決定に参加できるだけです。利益配分についても、基本的にはそれぞれの出資額に応じた配分を受けるのみです。 しかし、内部自治の原則を持つ組織形態では、出資者は自由に組織運営を行うことができます。例えば、組織として獲得した利益の分配を出資者が自由に決めることができ、特殊な能力で組織の運営に貢献した出資者に対して出資割合を超える分配を行うことも可能になります。また、組織内の権限についても、株式会社のように法制化された機関を置くことなく、自由に決めることができます。

  • パススルー課税

 パススルー課税とは、構成員課税ともいわれ、組織が獲得した損益に対する課税が組織の段階では行われず、その構成員、すなわち出資者の段階でのみ行われることを言います。

 パススルー課税は、次の2つの点で出資者にとって有利です。まず、組織で利益が計上された場合には二重課税を回避することができます。二重課税とは、組織の段階と利益の分配を受けた出資者の段階と二段階で課税がなされることを言います。株式会社の場合、株式会社の利益に対して法人税が課税された上で、さらに株主個人の段階でも配当に対して課税がなされます。現行の税法では、二重課税を回避するための措置として受取配当金の益金不算入や配当控除が設けられていますが、完全にこれを回避することはできません。パススルー課税の場合は、組織の段階で課税がなされませんので、二重課税は完全に回避されます。

 一方、組織で損失が計上された場合、株式会社では、出資者にとっては配当が受けられないだけで、課税上有利にはなりません。しかし、パススルー課税の場合は、出資者に分配された組織の損失が出資者のそのほかの所得と通算されるため、出資者にとって課税上有利な結果となります。

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