ReactOS、開発を中断してソースコードを監査(1/2 ページ)

Windows NTのフリー・オープンソース版として活動するReactOSは、そのコードベースにMicrosoftから流出したコードが含まれているという疑惑のため、開発を一時中止、コード監査を実施することとなった。

» 2006年02月06日 12時50分 公開
[Stephen-Feller,japan.linux.com]
SourceForge.JP Magazine

 世界で最も使われているOSのコードを盗用したという疑惑に、ReactOSチームは開発を中断してコード監査を実施する。

 ReactOSWindows NTのフリー・オープンソース版を実用に供すべく10年前から活動しているプロジェクトだ。そのコードベースにMicrosoftから流出したコードが含まれているという疑惑が浮上、その当否をめぐる鳩首協議の結果、1月27日に開発を一時中止した。ReactOSの300万行ほどあるコードベースの監査が終了するまで、ReactOSのダウンロード提供も中止される。

 この問題を受けて、ReactOSはプロジェクトのWebサイトに声明を出し、3つの措置を講ずると発表した。すなわち、プロジェクトが行うクリーンルーム方式によるリバースエンジニアリングが米国法の定める要件を満たすよう知的財産に関するポリシーの規定を明確化すること。そのポリシーに基づき、ReactOSのコードベースを監査し、準拠していない部分があれば書き直すこと。同プロジェクトに主要なコードを提供している開発者に対し、同プロジェクトのポリシーに同意する旨の文書に署名を求めること。以上の3つである。

 最近選出されたばかりのReactOSプロジェクト・コーディネーターであるスティーブン・エドワーズ氏によると、ある開発者が米国における著作権および企業秘密に関する法律および慣習に反してWindowsコードの一部をリバースエンジニアリングしたという疑惑が複数の開発者から指摘されたのがことの始まりだという。

 Windows 2000およびWindows NTのソースコードが一部流出し数年前からインターネット上を流通しているが、「コードベースには流出した不正なソースを転用したと思われる個所はありません。クリーンルーム方式で行っている活動の仕方を統一、徹底し、この点で告訴されることがないようにしたいだけです。それを確認するためにコードベースを監査しようとしているのです」

 そして、この監査によりプロジェクトは1年ほど停滞する見込みだが、行動規定の強化と徹底により将来の提訴を予防できるため、長い目で見ればプロジェクトにとってプラスになるだろうという。開発者たちがコードベースを精査する間に、プロジェクトのメンバーはコードの提供者がどこまでWindows およびそのコードベースにかかわれるかを明確にする。

 ReactOSはまだαレベルの域を出ていないし安定した製品と言えるようなものでもないとエドワーズ氏は言うが、ともあれプロジェクトの目標はWindows OSのフリー実装だ。ユーザーの手元にあるハードウェアが使え、WineプロジェクトのコードによりWindowsアプリケーションが動くWindows風の環境である。Wineは、MicrosoftのWin32アプリケーション・プログラム・インタフェース(API)を再実装することによってLinuxやFreeBSDなどのx86をベースとするオペレーティングシステム上でWindowsアプリケーションを動かそうというプロジェクトである。

 Wineを基に商用製品を開発している企業CodeWeaversの創立者でありCEOのジェレミー・ホワイト氏は、WineにはReactOSの開発者が多く参加しているが、提供したコードに問題があってWineへの参加を禁じられた者が何人かいると言う。必ずしもコードの盗用あるいは不正なコードが含まれていたからというわけではなく、コードを査閲しているアレキサンドル・ジェラード氏(CodeWeaversのCTO)が、自作として提供されたコードに懸念を抱いたための措置だ。

 ホワイト氏は、Windowsコードをざっと眺めたり偶然見かけたりするだけで開発者が影響を受けるとは考えにくく、いずれにしてもコードを手に入れるのは容易ではないだろうと言う。「王冠を手に入れるには探さなければなりません。たまたま見つかったなどということはないのです。(しかも)そのために何週間も何か月間も取り組んだと言っているのなら、それは偶発的なことではありません」

 Wineでは信頼できないコードや開発者を拒否しているが、2005年、Software Freedom Law Center(SFLC)の支援を受けてプロジェクトのコードを監査した。エドワーズ氏によれば、ReactOSもSFLCの協力を仰ぐつもりだという。

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