ゲーム開発を低コスト化するXNAがようやく見せた成果

XboxおよびPCゲームの統合開発プラットフォーム「XNA」構想の発表から2年。XNAは2006年3月に開催されたGame Developers Conferenceにおいて、その姿を垣間見せた。ゲーム開発の革新的な効率化を期待できるが、具体的な提供時期は発表されていない

» 2006年04月10日 07時00分 公開
[ Matt Rosoff,Directions on Microsoft]
Directions on Microsoft 日本語版

 XboxおよびPCゲーム用の統合開発プラットフォーム「XNA」構想を発表してから2年が過ぎ、Microsoftは遂に2006年3月に開催されたGame Developers Conference(GDC)において、XNAの一部のコンポーネントを公開した。XNAの目標は、まずWindows開発で使われているような開発ツールを提供することで、ゲーム開発のコストを削減することだ。グラフィックを駆使したXboxゲームの場合、1作品の開発に1000万ドル以上かかることもある。また、異種プラットフォーム間でのゲームの移植を容易にして、ゲームパブリッシャーがより短期間でコストを回収できるように支援することも目標の1つだ。しかし、XNAは開発のさなかにあり、主要コンポーネントの具体的な提供スケジュールについては発表されていない。

 GDC 2006では、チーム開発におけるコード管理支援ツール、ゲーム開発用の.NETライブラリ、サードパーティによるXbox Liveの利用を可能にするプラットフォームが公開された。

XNA Build
 計画されているXNA Studio開発環境のコンポーネントのうち初めて公開されたコンポーネントである。GDCではCTP(コミュニティ技術プレビュー)版として配布された。XNA StudioはVisual Studio Team Systemベースの開発環境で、コーダーやグラフィックデザイナーなどさまざまな役割のメンバーが携わる大規模なチーム開発を支援する。XNA Buildでは、ゲームビルドのオーケストレーションを支援するツール群を提供する。オーケストレーションとは、ゲームのソースコード、グラフィック、音声、動画ファイルをまとめて、コンソール上で実行できる形式に変換するプロセスを指す。例えば現在は、ゲームプロデューサーが独自のスクリプトとツールを使用して特定のゲームコンポーネント群を作成し、開発者がまた別のコンポーネント群を、グラフィックアーティストが別のコンポーネント群を作製するということが一般的だ。このような状況では、各コンポーネント間の依存関係の把握や、開発初期のゲームビルドのデバッグは困難である。XNA Buildは、Visual Studioおよび.NET Frameworkを基盤に統一されたビルドテクノロジーと、コンポーネント間の連携および依存関係を把握するためのツールを提供する。

XNA Framework
 ゲーム開発専用の.NETライブラリセットであり、MicrosoftのC#言語を使用してPCとXboxの両方のプラットフォームのゲーム開発を可能にする。XNA Frameworkの威力を示すデモンストレーションで、Microsoftはグラフィックを駆使したゲームをPCとXbox 360上で実行して見せたが、このゲームの両システム間での移植はわずか1日で完了したという。また、スマートフォンプラットフォーム用に開発した簡単な麻雀ゲームも1週間足らずでPCとXbox 360に移植できたとしている。ただし、XNA FrameworkはMicrosoft社内では使用されているが、ゲーム制作会社には現時点ではリリースされていない。

 XNA BuildおよびXNA Frameworkの配布版は、2006年末までにリリースされる見込みだ。

Xbox Live Server Platform
 サードパーティのゲーム制作会社が自社のゲームサーバーをMicrosoftのXbox Liveインフラストラクチャに接続できるようにするプラットフォーム。これは、サードパーティの制作会社が、数千人規模のプレーヤーが参加する大規模なマルチプレーヤーオンラインゲームを開発する場合に最も威力を発揮するだろう。同プラットフォームを利用すれば、ゲーム制作会社が実際のゲームサーバーを保守でき(これはMicrosoftとしては負担を免れたいコストだ)、Xbox Liveではネットワーク接続や認証などの基本サービスを提供する。Xbox Live Server Platformのサポートは、2006年5月にリリースが予定されているXbox Development Kitの次期バージョンに組み込まれる予定だ。

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