氾濫する“効果の出ないシステム”の原因と対策を考える2あなたの会社は大丈夫か?企業にはびこる「間違いだらけのIT経営」:第2回(1/2 ページ)

IT導入を成功させるためには、トップの積極的関与が不可欠である。本稿ではまずIT導入の失敗要因について考察し、成功のため条件を探る。経営トップが「結局、システムを使いこなせなかった」と嘆く前の処方箋を見出していこう。

» 2006年06月16日 07時00分 公開
[増岡直二郎,アイティセレクト]

 筆者のこれまでの経験や信頼できる各種調査から、IT導入の失敗要因は以下の条件が欠落あるいは判然としない状態で導入が進められていることにあると考える。

 すなわち「トップの関与」「目標の明確化」「人材」「社内意識改革」「ユーザーの参画」「業務改革」「要件定義」の7項目である。そしてこの項目について自社で明確にし、導入を進めていけばおのずとプロジェクトは成功するはずだが、言うは易く行うは難しというのが現状であることも説明した。

成功を導く七つの条件とは

 この7項目というのは、IT導入という以前に経営そのものを成功に導く条件ともいえる。企業の中で行われている間違いだらけの経営実態を考えたときに、それを克服しないとIT導入の成功条件の実現も成果の達成も期待できないだろう。まず、IT導入に失敗するべくして失敗する信じられない場面に、筆者が遭遇することは決して珍しくない。厳しい表現をお許しいただいて紹介してみよう。

 ある時某小企業のトップは筆者に誇らしげに言った。「わが社もグループウエアとやらを導入して、やっと先進企業の仲間入りをしました」。それから約1年後、そのトップは悲痛な面持ちでつぶやいた。「IT導入したのに、目立った効果は何もない。失敗だった」。

 問いただすと、導入さえすれば効果が出ると思い込んでおり、導入に当たっての経営方針も、目標も、準備も一切なかったことがわかった。無条件にIT万能を信じたケースだ。

 某中堅企業の設計部長は、ITを導入すると間接費の配布が増えて製品原価が上がると言って最後の最後まで導入に反対し、導入後も不満を言い続けた。しかもその不満の言動が社内で公然と許されていた。社内意識改革が忘れられたケースだ。間接費配布の増大だけをクローズアップして不満を言い続ける部長を野放しにしていれば、社内全体がその主張に引きずられるのは明白だ。そういう意識下では、間違いなく間接費配布の増大だけがIT導入の結果となる。

 別の某中規模企業の役員会議で、ERPについて導入を前提にスタディをすることが決まった。しかし肝心のシステム部長が反対した。「ERPを導入するためには業務の流れを改革しないとダメですが、ウチにはそういう人材も力もありません」と。その企業では彼の考えがあまりにも意固地なので、彼を外して導入プロジェクトを始めた。ERP導入そのものが目的化され、プロジェクトチームのメンバーには各部門の余剰人材が間に合わせ的にあてられ、しかも事前に手がけるべき業務改革は時間がないのでERP導入後に手がけるという本末転倒の考え方で進められた。結果、ERPは使えないシステムの道を歩むことになった。

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