初心者ユーザーの増加に対応したソニーVAIO事業部の取り組み――G-Forceジャパン

ジェネシス・ジャパンは6月16日、年次ユーザーコンファレンス「G-Force Japan 2006」を都内のホテルで開催した。パネルディスカッションでは、ソニーのPCであるVAIO向けコンタクトセンター構築に携わる同社の岡本英央氏が講演している。

» 2006年06月16日 17時30分 公開
[怒賀新也,ITmedia]

 コンタクトセンターソリューションを提供するジェネシス・ジャパンは6月16日、年次ユーザーコンファレンス「G-Force Japan 2006」を都内のホテルで開催した。基調講演に米Genesysのウェス・ハイデンCEOが登場、続いて行われたパネルディスカッションでは、ソニーのPCであるVAIO向けコンタクトセンター構築に携わる同社の岡本英央氏、化粧品の通信販売などで急成長している福岡のJIMOSが、Genesysの製品を活用した自社のコンタクトセンター運営におけるさまざまな事情を話している。

 創業後8年で売上高が100億円規模に達した通信販売会社であるJIMOSは、顧客維持率ナンバーワン企業を目指してコンタクトセンターを充実させているという。JIMOSのコンタクトセンター部でエグゼクティブマネジャーを務める野元寿代氏は、「顧客を思うことをいかにコンタクトセンターに根付かせるかがテーマ」と切り出した。

「エージェントのマニュアルをなくし、個性を生かすような施策もやってみたい」と話すJIMOSの野元氏

中心的役割を果たすコンタクトセンター

 同社は、GenesysのERS(Enterprise Routing Solution)を導入し、データベースを基に各コールに対応するエージェントを決めるデータベースルーティングをシステムとして導入した。適切なルーティングにより、受注単価は1カ月で7827円から1万669円に伸び、また、1時間あたりの受注件数も、導入前の8.1件と比較して受注後は9.2件にまで増えたという。

 同社は、コンタクトセンター内に戦略企画室を設け、顧客の声をすぐにビジネスに反映できるような体制を構築している。通信販売企業ならではという面もあるものの、コンタクトセンターを顧客向けの窓口として最も重要な位置付けに据える企業の成功例として、注目される。

 同社では、コンタクトセンターのエージェントのやる気を高めるために、さまざまな取り組みを行っているという。野元氏が強調するのは、とにかくエージェントを褒めること。だが、「頑張っているね」とただ褒めるだけでは無意味という。具体的にどこを一番頑張っているかを理解し、そこを褒めてあげなければ、エージェントは「褒められた」とは感じないという。同社では、エージェントの結婚式のスピーチを顧客が行うことがあるほど、顧客との関係を上手に築けている。

VAIOの初心者ユーザー増加に気付く

 一方、VAIOの初心者ユーザー向けのコンタクトセンターを立ち上げたことを紹介した、ソニーのVAIO事業部門VAIOカスタマーリンクオペレーション担当部長の岡本英央氏は、2004年5月に立ち上げた「初心者ダイヤル」について詳しく紹介している。

初心者ダイヤルの狙いについて話す岡本氏

 1997年7月にリリースされたVAIOは当初、PCの上級ユーザーが圧倒的に多く、製品も実際にそういった層に向けて開発されていた。だが、次第に初心者ユーザーが増加していることになかなか気付かなかったという。日経パソコンの調べで、2005年8月時点で、初心者31.9%、中級52.9%、上級5.2%となっており、初心者が3割に上った。

 そこで、ソニーは初心者のサポートを手厚くすることで、顧客に価値を提供することを決断し、コンタクトセンターに「初心者ダイヤル」が設置された。初心者の多くが「専門用語にプレッシャーを受けるため、できるだけコンタクトセンターに電話をしたくない」と考えていることが分かり、同ダイヤルでは、極力専門用語の利用を避けることにした。例えば、インストールは「新しいソフトを加える」、アイコンは「画面に表示される小さい絵」、LANケーブルは「うどんくらいの太さの線」、ISP(インターネットサービスプロバイダー)は「情報を届けてくれる宅急便」といった具合だ。

 同ダイヤルの利用ユーザーには、周辺機器と聞かれて、「えー、炊飯器と……」といった返事を大まじめにするユーザーも多く、こうした取り組みが重要であることが分かったとしている。

 また、当初は、初心者ユーザーのサポートには時間が掛かるのではないか、という懸念があったが、実際には無用の心配だったようだ。というのも、ほとんどの質問が簡単なものばかり。例えば「PCを箱から出したのですが次に何をすればいいですか」「エクセルを立ち上げたい」といった質問が大半だった。「左下のスタートボタンを押して、“すべてのプログラム”、“Excel”と進んでください」とこたえれば、ユーザーは大変満足した様子で電話を切るという。

 「コンタクトセンターをコストセンターではなく、プロフィットセンターと位置付けるために、センターの利便性の高さをPCのカタログなどでアピールすることで、直接的な販売動機になるようにしたい」と話す岡本氏の悩みは、「不当にソニーの商品イメージが悪いこと」だ。

 「“買ってから1年1カ月で壊れるソニータイマー”など埋め込まれているわけがない。だが、こうしたイメージはなぜか根強く残っている。マーケティング、アフターサポート、製品開発部門を連携させて、とにかくイメージアップを図りたい」(同氏)

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