音声自動応答システムで先を行く米国のコンタクトセンター

Genesysが先週開催した「G-Force 2006」におけるトピックスの1つは音声自動応答システム(IVR)によるコンタクトセンター構築だ。

» 2006年05月30日 21時44分 公開
[怒賀新也,ITmedia]

 コンタクトセンター向けプラットフォームを提供する米Genesysは先週、米国ラスベガスにおいて同社の年次ユーザーコンファレンス「G-Force 2006」を開催した。トピックスの1つは、音声自動応答システム(IVR)によるコンタクトセンター構築だ。日本ではまだIVRの高度な利用例は多くないが、米国ではかなり複雑な処理もIVRでこなせるようになっていることが分かる。

 この日は、米Office Depotのコンタクトセンターの事例が紹介されている。同社のコンタクトセンターでは、購買プロセスのほとんどが音声で行うことができる。ユーザー認証、注文する商品、クレジットカード番号の認識にいたるまで、すべてを音声で伝えることができる。「アイテムナンバーは?」「幾つ買いますか?」といった自動音声に対して、自然な会話と同じイメージでこたえるだけで、取引が進んでいく。ここでベースになっているのは、米Tuvoxが提供する音声認識ソフトウェアだ。

実際のコールセンターに電話を掛けるデモであったため、クレジットカード番号を声に出してしまった担当者

 だが、日本市場では、「顧客満足を得られない」としてIVR自体に懐疑的なユーザーが多いことや、日本語の複雑性により英語ベースのサービスと同じ水準を実現することが難しいといった理由で、まだ広く普及しているとは言えない状況になっている。米国では自動音声応答システムの利用がさらに高度化する動きが出てきており、日本市場の今後の対応が注目される。

適切な担当者へのルーティングがカギ

 さらに重要な機能はルーティングだ。電話を掛けてきた顧客のニーズに最も的確にこたえられる人をいち早く探し、電話につなげることは、コンタクトセンターの生命線と言ってもいい。

 基調講演では、適切なルーティング機能を提供する様子も、デモを通じて伝えられた。設定は、架空の企業であるFirst Global社の顧客として、カリフォルニア州知事を務めるアーノルド・シュワルツネッガー氏が登場した。シュワルツ・ネッガー氏は2つの住宅ローンを契約しており、所有する株式も多い顧客だ。

 そんなネッガー氏がコンタクトセンターに連絡したときに、企業としては「だれが電話に対応するか」が問題になる。株式を多く所有する同氏に、投資信託を勧めることも可能だからだ。

 まず、同氏のコールを受け取ったGenesys Voice Platform(GVP)ベースのIVRは、最適な応対候補者としてブランチオフィスのAさんを指名した。だが、あいにくAさんは手が空いておらず、2番目に適した人物としてコンタクトセンターで豊富な経験を持つエージェントであるBさんが対応するようにルーティングを行った。

 こうした仕組みは、コンタクトセンター以外の複数の部門が統合され、コンタクトセンターから呼び出せるように統合されていなければ実現することはできない。このように、デモでは、コンタクトセンター、営業支店、アウトソース先、財務部門など、複数の部署がバラバラに存在することなく、一体となっている仕組みをGVPによって構築できることが紹介された。

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