IP化でコンタクトセンターを変革するG-Force 2005開幕

Genesysは米マイアミで「G-Force 2005」を開催。コンタクトセンターのIP化、セルフサービスの進展、また、Microsoftとの協業について紹介している。(「企業の顔」コンタクトセンターの最新事情)

» 2005年05月25日 18時43分 公開
[怒賀新也ITmedia]

 コンタクトセンター製品大手のGenesysは5月24日から2日間にわたり、同社の取り組みや最新のユーザー事例について紹介するイベント「G-Force 2005」を、米マイアミで開催した。コンタクトセンターのIP化により、顧客からの電話に対応する「エージェント」が自宅でも対応できる環境が整うことや、ユナイテッド航空によるセルフサービスの導入事例などが紹介されている。

 また、Genesysが米Microsoftと協力して行う新たなIM(Internet Messaging)サービスである「GETS(Genesys Enterprise Telephony Software)」についても詳しく紹介された。両社は、Genesys Enterprise Telephony Software(GETS)と、Microsoft製品、OfficeのLive Communications Server 2005および同社の次期製品となるライブ・コミュニケーション・クライアント(コードネーム "Istanbul")との連動により、企業向けにテレフォニー・コラボレーション機能を提供することを2月に発表している。

ハイデンCEO。

 マイクロソフトは、5万ユーザーに上る巨大な導入企業として、ソフトウェア利用へのアプローチである「ドッグフード」に基づき、GETSを導入した。ドッグフードには、「毒味」の意が含まれており、「売る前に自分たちで使って確かめてみよう」という考え方が含まれている。

 1400人という多数の参加者を集めて行われた初日の基調講演では、Genesysのウェス・ハイデンCEOが、世界で営業成績がトップだったという中国の女性社員を紹介。それにちなんで、スクリーン上で「危機」という漢字を紹介した。

 当然、参加者のほとんどが全く意味が分からない中で、「危はDanger、機はOpportunityの意味であり、危険と機会を併せ持っている言葉だ。これは、(2004年における元CEOの辞任など)危うい状況と、それを乗り越えて新たなチャンスをつかもうとしている現在のGenesysの姿を映す象徴的な言葉だ」と話した。

 「IT業界ではいまだにコスト削減がテーマだが、コンタクトセンターの価値が確実に高まり、戦略的な位置づけになってきている」(ハイデン氏)

IP化によって変わるコンタクトセンター

 今回のテーマは「コンタクトセンターのIP化をいかにサポートするか」にある。

 コンタクトセンターでは、一般に、エージェントの定着率の低さが課題になっている。これは、業務自体がストレスの強いものであるだけでなく、特に女性のオペレータの中に、結婚や出産といった転機に辞めてしまうことも原因になっているという。

 一方で、現在、PBX(構内交換機)やCTIをベースにした従来のコンタクトセンターをIP化しようとする動きが出てきている。IP化した場合、インターネット環境さえあれば、電話はもちろん、インターネットメッセージング(IM)など、さまざまなメディアを場所を問わず利用できるようになる。

 「コールセンター以外の組織と連携することもできる」という。また、エージェントは出社しなくても、自宅で従来どおりの仕事をこなすことも可能。実際に、世界の多くの企業がIP化によって、コールセンター機能をインドや中国など、人件費を含めた総コストの低い国々(いわゆるオフショアリング)にアウトソースするケースも多い。

 もちろん、米国から電話をかけた利用者にとって、例えば、「インドや中国のエージェントの英語が分かりにくい」など、不満も多いのが実情というが、とにかく、技術的には、IP化が従来の枠組みを超えた仕組みを提供する可能性を持つことは確かだ。

 例えば、IMと連携することによって、エージェントやバックエンドの専門担当者などの在籍を常に確認することができる。顧客との通話において、必要以上に話が込み入ってしまった場合も、適切な人に電話をつなぐ(ルーティングする)ことが可能になる。さらには、コンタクトセンターの通話量全体を管理していれば、時々の混み具合(コールボリューム)を考慮して、各エージェントに対して「コールボリュームが大きくなっているので、今はお客様と無駄話はしないでほしい」「現在、コールボリュームに余裕があるので、アップセルをしてみてほしい」といった観点で、アドバイスを送ることもできる。

 Genesysは、“オープンなIP化”を掲げ、さまざまな製品が混在する環境を含め、どんな状況でも、ユーザーのIP化を支援していく考えとしている。

セルフサービス化を実現したUA

 一方、コンタクトセンターにアクセスするユーザー側に最も影響が出るテーマが、セルフサービスの使い方だ。これはIVR(音声自動応答装置)を利用することにより、エージェントを介することなく、大量のコール(トランザクション)を24時間365日にわたって対処できることが最大のメリットだ。

 宅配会社の不在通知票に記されている電話番号など、身近な例も多い。だが、ユーザーからは、「人間と話したい。自動応答だと回り道をさせられる」など、必ずしも好評ではない。

 だが、この日は、IVRを最大限に利用して成功した例として、ユナイテッド航空の例が挙げられた。

 ユナイテッド航空では、チケット購入をはじめとしたユーザーからの通話全体の20%を、IVRを使ってセルフサービス化した。 シカゴからマイアミの航空券を考えても、キャンペーンをやっていないか、クリスマスシーズンにかかっていないかなど、チェック項目は多い。運賃、座席、チケットの発行などのセルフサービス化は、「簡単そうに見えて難しい」(同社)としている。

G-Force展示会場の様子

 なお、6月7日に東京で同名のイベント「G-Force Japan 2005」が行われる。

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